【在宅医療】処方箋で出せる注射薬(高カロリー輸液含む)について



 どうも。学会用の論文を上司に提出する期日が迫っており、若干ブルーなしきぽんです。

 先日TwitterのDMにて、在宅医療の現場で出せる注射薬や、払い出しの方法についてお問い合わせをいただきました。事例解説のため、記事にして共有いたします。

 今回の内容は、実際に医療現場で働いている薬剤師向けの内容になります。

 しかし、ここで法律について説くつもりはありません。
 各都道府県や厚生局によって、解釈には微妙な違いがあるため、詳細については地域の担当部署に確認を取りましょう。

 それでは、前置きもそこそこに本題へ入ります。

※今回の記事は、以前に他の薬局薬剤師に対して講演したお話の一部になります

Chapter.1 点滴、注射薬を処方箋で出すにあたって

 保険医が処方できる注射薬ならびに点滴については、「在宅医療における注射薬に関連する告示および通知等」をご参照ください。中心静脈栄養を実施している方への高カロリー輸液の処方では、前提条件として、往診する医療機関がどういった診療報酬を算定しているかを把握しなくてはなりません。後述する「中心静脈栄養法指導管理料」や「在医総管(在宅時医学総合管理料)」を算定しているか否かによって、処方箋への記載方法が変わってくる可能性がございます。

 また医薬品である点滴・注射の他に、輸液セットや注入ポンプといった特定医療材料も処方箋に記載することが可能です。処方箋への記載内容については後述いたします。

Chapter.2 中心静脈栄養輸液(高カロリー輸液)と特定医療材料の処方記載について

 基本的に、「在宅医療における注射薬に関連する告示および通知等」に記載された薬剤であれば処方箋に記載することは可能です。

 例として、この場ではエルネオパNF1号輸液1000mlで考えていきます。こちらの薬剤を用いて処方箋内容を考えた場合、下記のようになります。

Rp.1 エルネオパNF1号輸液1000ml 7キット
   24時間持続中心静脈投与

Rp.2 中心静脈栄養輸液セット 2セット
  (カフティポンプ用チューブセット、週に2回交換)

Rp.3 中心静脈栄養輸液セット 2セット
  (フーバー針:セーフタッチコアレスニードル、週に2回交換)

 

 週に2回点滴のルートを交換する形で、1週間分の処方ができました。必要に応じて、PPIのオメプラゾールや、ステロイドのリンデロンを追加しても良いかもしれません。患者様の容態に合わせて医師へ提案をしてください。使用する医療材料について、中心静脈栄養の輸液セットは特定保険医療材料に指定されておりますので、処方箋内に記載しております。ここに記載したもの以外(アルコール含浸綿など)は医療機関の負担分となります。後述する「中心静脈栄養法指導管理料」や「在医総管」などの中から払い出しされることになります。

Chapter.3 医科の診療報酬との兼ね合い

在医総管(在宅時医学総合管理料)

 医療材料について、在医総管を算定されている場合は、その中から物品を払い出してもらいます。在医総管の算定ができない場合は、衛生材料等提供加算(訪問看護指示料の中の加算)を算定し、その中から出してもらいましょう。もし、衛生材料等提供加算の算定もできないようならば、往診料から算定してもらいます。

在宅中心静脈栄養法指導管理料(高カロリー輸液を伴う場合)

 医療機関が在宅中心静脈栄養法指導管理料を算定しているのなら、1か月に7組以上の在宅中心静脈栄養輸液セットを用いた場合、7組目以降は処方箋に記載して院外処方にすることができます(フーバー針、輸液バッグ、点滴ライン等)。もし在宅患者訪問点滴注射管理指導料(後述)を算定しているのなら、当該管理料は算定不可。また、当該管理料を算定した場合、中心静脈注射の費用についても算定することはできません。


 以前、某病院の患者様を担当した際には、点滴ライン等の「在宅中心静脈栄養輸液セット」は院内のナースステーションから払い出されていました(地域連携室を通して医師にも確認済)。

 医科の診療報酬の算定の有無に加えて、点滴の実施期間によっても処方内容に影響が出てきます。点滴の処方依頼をする際には、そうした点にも注意しましょう。

 また、当該加算を算定されている医療機関様から「注入ポンプ加算」ならびに「在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算」の算定可否を尋ねられることもありますが、その際には可能とお答えください。※注入ポンプ加算については、機械式ポンプを使用している場合のみ。

在宅患者点滴注射管理指導料(高カロリー輸液を伴わない場合)

 週に3回以上点滴注射が必要な患者様について、看護師などに必要な指導を行った場合に当該指導料が算定可能です。院外処方の場合、医科は薬剤料の算定ができませんので、一度の処方で1週間分くらいを出すことはできます。往診の頻度に合わせて調整してください。

 以下に末梢点滴を使用する際の処方例を記載しておきます。点滴ルートなどの医療材料は診療報酬の中から出してもらいます。

Rp.1 ソリタT3号輸液500ml 7本
   末梢より投与

Rp.2 メドレニック注 7管
   補液に添加して使用

Rp.3 オメプラゾール注20mg 7管

Rp.4 生食注20mlシリンジ 7本
   薬剤の溶解希釈用

おわりに

 院内、院外を問わず、在宅医療の場で注射薬を使用する機会に遭遇する薬剤師は多くありません。しかし、2025年問題が実現しつつある昨今、家での看取りや治療は選択肢としてメジャーになりつつあります。

 今の時点では不要な知識でも、いずれ関わる可能性が高いものである以上、今回の内容は知っておいて損はないものだと思います。

 何か気になることがあれば、お問い合わせフォームよりご連絡いただけると幸いです。

 例によって、今回取り上げた内容もかなり限定的なものでしたね(-_-;)

 なにはともあれ、また次の記事でお会いしましょう!(無理やり感)



4件のコメント

初めまして。

まさにこの問題に直面し、昨夜医療機関からの相談をお受けしていましたが、わたくし自身初めての事だったので大変参考になりました。心から感謝をお伝えしたいです。藁をも掴む必死さがあればこうして乗り越えていけるのかなと思いながら書いています。ほんとうにありがとうございました。どうぞしきぽん様もお身体ご自愛くださいませ。

はじめまして。
そう言っていただけると、記事を書いた甲斐がありました。
経験がない中、急な依頼が来るとびっくりしてしまいますよね。
大変な夜だったと心中お察しいたします。
そして、間接的でも患者様のお役に立てたのなら何よりです。

かれん様も、ご無理のないようにしてください。
ありがとうございました。

処方せんで交付できる注射薬は、あくまで患者が自己注射できる注射薬であり、最後のケースのような、状況に応じて看護師が投与する注射薬は、処方せんで交付は不可で医療機関が提供するものと思っていました。ただし、末梢ルートが常に留置されており、患者自身がルートを繋ぐことが可能な状態であれば、処方せんによる交付が可能と認識しておりました。このあたりは、いつも悩むところです。何か明確な告示などあればご教示お願い致します

しばらくブログを放置しており、本日コメント内容に気付きました。
大変申し訳ございません。
ソリタなどの電解質輸液は、「在宅医療における注射薬に関連する告示および通知等」に記載されている電解質製剤に該当します。
また、以下の参考資料がございます。
https://municipal-hospital.ichinomiya.aichi.jp/wp-content/uploads/2018/07/201804.pdf

しかしながら、在宅医療専門の薬剤師として働いている中で、実際にソリタを処方箋によって払い出したことは数えるほどしかございません。
理由は2点ほどあると考えています。
1つは、処方医が過去にソリタなどは処方による払い出しが出来ないと伝えられており、当時の感覚がそのまま残っている。
もう1つは、食事は出来ないまでも内服は可能という方もいらっしゃいますので、適用内容と突合する可能性がある。
こんな感じでしょうか。

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