目次
レノバ(9519)3Q決算後の株価展望と総合分析
レノバは2026年2月6日、2026年3月期第3四半期(4-12月)累計で純利益36.4億円の黒字転換(前年同期は9.1億円の赤字)を発表した。通期計画15億円に対する進捗率242.9%は過去5年平均99.0%を大幅に上回り、業績面では明確なサプライズとなった。しかし株価は発表当日(引け後15:30発表)に前日比-1.44%の683円で引けており、翌営業日2月9日以降の反応が焦点となる。テクニカル面では下降トレンド継続中・RSI 27.27の売られ過ぎ水準にあり、ファンダメンタルズの改善とテクニカルの弱さが交錯する局面だ。アナリスト・コンセンサス目標株価913〜1,093円に対して現在株価は34〜60%のアップサイドを残しており、中長期では再評価の余地があるが、信用買い残235万株超の需給面の重しが短期的な上値を抑える可能性が高い。
3Q決算の詳細と「見かけ上のサプライズ」の実態
2026年3月期3Q累計の業績は以下の通り。売上収益は前年同期比で大幅増収、営業利益率もQ3単独で2.5%→12.3%へ改善した。
| 項目 | 3Q累計(4-12月) | 前年同期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 純利益 | 36.4億円 | ▲9.1億円 | 黒字転換 |
| 通期計画進捗率 | 242.9% | — | 5年平均99.0% |
| Q3単独営業利益率 | 12.3% | 2.5% | +9.8pt |
ここで注意すべきは、通期会社計画の純利益がわずか15億円と極めて保守的に設定されている点だ。前期(2025年3月期)の純利益26.9億円から44.2%減益の計画であり、これは前期に計上した唐津バイオマスの段階取得差益などの一時的利益の剥落を織り込んだものである。つまり進捗率242.9%の「分母」自体が小さく、絶対額では36.4億円という利益水準は過去の好業績期(FY2021の115億円、FY2024の88.6億円)に比べると依然として控えめである。
会社側は3Q決算発表後も通期予想を据え置いており、Q4(1-3月)に約21.4億円の純損失を暗黙に想定している。これは季節要因(冬季の太陽光発電量減少)や開発費用の集中計上を反映している可能性があるが、仮に実際のQ4が損益トントンであれば、通期純利益は36億円超に達し、会社計画の2.4倍、前期比35%増益という水準になる。この場合、実績ベースPERは約17倍まで低下し、現在の見かけ上のPER 41倍から大幅にバリュエーションが改善する。
過去5年の業績推移が示す構造的課題と転換点
レノバの過去5年間の連結業績(IFRS基準)は以下の通りで、売上高は5年で3.4倍に拡大した一方、利益の安定性に欠ける構造が続いてきた。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2021年3月期 | 205億円 | 46億円 | 115億円 | 149.7円 |
| 2022年3月期 | 292億円 | 9億円 | 16億円 | 20.3円 |
| 2023年3月期 | 336億円 | 89億円 | 27億円 | 34.1円 |
| 2024年3月期 | 447億円 | 50億円 | 89億円 | 112.3円 |
| 2025年3月期 | 702億円 | 41億円 | 27億円 | 29.9円 |
| 2026年3月期予 | 905億円 | 93億円 | 15億円 | — |
FY2021の純利益115億円は仙台蒲生バイオマスのコールオプション公正価値変動益など一時的要因が大きく、FY2024の89億円も段階取得差益が寄与している。営業利益ベースでは、売上が3.4倍になったにもかかわらず41〜93億円のレンジにとどまっており、新規プラントの減価償却費増、バイオマス燃料費、開発費が利益を圧迫してきた。
FY2026は営業利益93億円(前期比128.7%増)と、この構造的な「売上は伸びるが利益が伴わない」パターンからの脱却が期待される転換の年だ。全7基のバイオマスプラントが通年稼働し、減価償却のピークを超えつつある。3Qまでの営業利益率改善はこの構造変化を裏付けている。
バリュエーション面では、PBRが0.65〜0.66倍と上場来最低圏にある。BPS(1株当たり純資産)は約1,031円で、株価683円は純資産を大幅に下回っている。過去のPBRレンジは0.58〜24.63倍であり、2021年の再エネバブル期(PBR 24倍超、株価5,000円超)からの落差は極端だ。ROEがFY2025で3.02%と低迷していることがPBR1倍割れの主因であり、ROE改善なくしてバリュエーションの本格的な回復は困難である。
事業ポートフォリオの全体像と成長ドライバー
バイオマス発電:収益の柱だが成長限界に
バイオマスはEBITDAの約64%を占めるレノバの収益の柱である。秋田(20.5MW)、苅田(75MW)、仙台蒲生(75MW)、徳島津田(75MW)、石巻ひばり野(75MW)、御前崎港(75MW)、唐津(49.9MW)の全7基・合計約445MWが稼働し、日本最大級の独立系バイオマス発電事業者となった。稼働率は苅田・秋田が93%と高水準だが、仙台蒲生は気温・強風の影響で87%にとどまっている。
しかし、経済産業省が2026年度から大型輸入バイオマス(1万kW以上)のFIT/FIP支援を廃止する方針を決定したため、新規大型バイオマスの開発は事実上凍結された。レノバも2025年7月に新規大型バイオマス開発の凍結を発表しており、既存プラントの収益最大化とFIT→固定価格PPAへの契約転換が戦略の中心となっている。
蓄電事業:最大の成長ドライバー
蓄電事業はレノバの中期計画2030における最重点分野であり、投資額約2,000億円(全体3,400億円の約6割)を投じてFY2030までに0.9GWの蓄電容量を目指す。現在のパイプラインは以下の通り。
- 姫路蓄電所(15MW/48MWh):2025年10月稼働開始、レノバ初の蓄電施設。出光興産との共同事業
- 長期脱炭素電源オークション落札3件(苫小牧90MW、白老50MW、森町睦実75MW、計215MW):2028年度運転開始予定。20年間の固定収入が確保されており、プロジェクトファイナンスも2025年2月に組成完了
- 米国テキサス(200MWスタンドアロン蓄電):ERCOT市場向け、2028年運転開始予定
長期脱炭素電源オークション第2回(2024年度)では蓄電池が1,370MW落札(第1回1,092MWから増加)しており、20年間の容量支払いによるファイナンス安定性が事業の確実性を高めている。
コーポレートPPA:第2の成長エンジン
非FIT太陽光を中心としたコーポレートPPA事業は、村田製作所(60MW)、大塚商会(合計約23MW)、東京ガスとの提携を通じて拡大中。FY2025時点で352サイト・54.9MWが竣工済み。中期計画ではFIT収入比率を77%から**26%に引き下げ、固定価格PPA比率を23%から68%**に引き上げる構造転換を目指す。太陽光PPAの価格は過去2年で20〜30%上昇し約12円/kWhに達しており、収益性は改善傾向にある。
洋上風力:長期テーマに後退
2021年12月の第1ラウンド入札で三菱商事コンソーシアムに敗れた秋田由利本荘沖プロジェクト(約700MW)は、レノバの株価を6,390円から1,500円台へ暴落させた転換点だった。さらに2025年8月に三菱商事が第1ラウンド全3海域(計1,742MW)から撤退し、日本の洋上風力産業全体が大幅な遅延に直面している。レノバは中期計画で洋上風力を「長期事業」と位置付け、当面は陸上風力(天草54.6MW建設中、由利本荘岩城106MW計画中など)にシフトしている。
テクニカル分析:売られ過ぎだが下降トレンド継続
| 指標 | 値 | 評価 |
|---|---|---|
| 株価(2/6終値) | 683円 | 52週高値から-33.4% |
| 52週レンジ | 470〜1,025円 | 中間値747円を下回る |
| 25日移動平均線 | 約691円 | 下回っている |
| 75日・200日MA | 推定710〜760円 | 大幅に下回っている |
| RSI(14日) | 27.27 | 売られ過ぎ圏 |
| ボリンジャーバンド-2σ | 616円 | 下限サポート |
| MACD | 売りシグナル | — |
| 信用買い残 | 235.5万株 | 発行済の約2.6% |
| 信用倍率 | 7.56倍 | 極めて高い(需給の重し) |
株価は2025年4月の安値470円から9月の1,025円まで+118%の反発を見せた後、再び680円台まで下落した。全ての主要移動平均線を下回り、MACDも売りシグナルを点灯している。Asset Aliveは「下降トレンド継続中・戻り売りゾーン」と判定しており、TradingViewの総合判定も「強い売り」となっている。
一方でRSIは27.27と売られ過ぎ水準にあり、ボリンジャーバンド-2σ(616円)付近がテクニカル的な下値目途となる。2月6日の出来高484,100株は通常(40〜55万株)の範囲内であり、パニック売りの兆候はない。
信用買い残235.5万株・信用倍率7.56倍は最大の需給リスクである。信用買い残は過去6ヶ月間一貫して200〜270万株の高水準を維持しており、含み損を抱えた信用買いポジションの投げ売りが下落局面で売り圧力を増幅させる構造がある。
セクター環境は中長期で強力な追い風
再エネセクターのマクロ環境は構造的に好転している。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は再エネ比率を2040年に40〜50%(過去最高の目標)とし、初めて再エネを「最大の電源」と位置付けた。
データセンター需要が電力需要の構造的増加を牽引している点は特に重要だ。OCCTOの予測では、数十年ぶりに2024年から2034年にかけて電力需要が持続的に増加する見通しであり、Wood Mackenzieは日本のデータセンターだけで2034年までに1,500〜1,800万世帯分の電力を消費すると試算している。第7次計画も2040年の総電力需要を1.1〜1.2兆kWhと現状比10〜20%増で見込んでいる。
政策面では、2026年4月からGX-ETS(排出量取引制度)が始動し、直接CO2排出10万トン以上の約300〜400社に排出枠の保有を義務付ける。2028年には化石燃料賦課金も導入され、化石燃料発電のコスト増→再エネの相対的競争力向上という構図が強まる。容量市場でも2028年度メインオークションの総額が1.85兆円(前年比+41%)と過去最高を記録し、再エネの落札率は3年連続100%を達成している。
リスク要因の定量的評価
有利子負債と金利リスクはレノバ最大の構造的リスクである。有利子負債3,329億円、D/Eレシオ3.74倍、自己資本比率**16.8%**と一般企業としては極めて高いレバレッジだが、大半がプロジェクトファイナンス(ノンリコースローン)であり、各発電所のFIT契約収入で返済される構造となっている。既存債務の多くは金利スワップで固定化されているため、「期中の市場金利変動の影響は限定的」(有価証券報告書)とされるが、新規開発案件(蓄電1,500億円超の投資計画)においては日銀の利上げがプロジェクトIRRを直接的に圧縮する。JCRはBBB格付を維持しつつ、2025年9月にアウトルックを安定的→ポジティブに引き上げた。
バイオマス燃料価格リスクについては、輸入木質ペレット・PKSがUSD建てであるため円安が直接コスト増要因となる。レノバは長期為替予約でヘッジしているが、バイオマスがEBITDAの約60%を占める以上、為替・燃料価格の変動は業績への影響が大きい。FY2025はスポット燃料価格の低下が追い風となったが、この状況の持続性には不確実性がある。
出力抑制は九州を中心に全国10電力管内に拡大しており、2024年の全国抑制量は約212億kWh。2026年からはFIT設備がFIP設備に先んじて抑制される新ルールが適用されるため、FIT契約の多いレノバの太陽光資産にとってはマイナス要因となる。
建設遅延リスクはレノバの歴史的なアキレス腱だ。御前崎港バイオマスは当初2023年7月予定が2025年2月まで約1年半遅延、唐津バイオマスも2024年12月予定が2025年9月まで9ヶ月遅延した。遅延損害金をEPC事業者から受領する仕組みはあるものの、収益計画への影響は避けられない。
アナリスト評価と2/9以降の株価シナリオ
アナリスト・コンセンサス
| 指標 | 値 |
|---|---|
| カバレッジ | 5名(全員Neutral) |
| コンセンサス目標株価 | 913〜1,093円(IFIS/Investing.com) |
| 現在株価との乖離 | +34%〜+60% |
| 直近の目標株価引き下げ | 2025年5月に730円(大手証券) |
全アナリストが**中立(Neutral)**評価を維持しており、強気推奨は皆無である。目標株価は最低860円〜最高1,450円のレンジで、中央値は約1,000円前後。現在の683円はコンセンサス目標を大幅に下回っている。
2/9以降の短期シナリオ
ポジティブ・シナリオ(確率:中):3Q累計の黒字転換・進捗率242.9%を好感し、2月9日に窓を開けて上昇。RSI売られ過ぎからの反発と相まって、25日移動平均線(約691円)から700〜740円のレジスタンス帯を試す展開。ただし信用買い残の戻り売りが上値を抑え、750円超は短期的には困難。
ニュートラル・シナリオ(確率:中〜やや高):「好業績は織り込み済み」として小幅反応にとどまる。Q2時点で既に営業利益進捗率52.6%と好調だったため、市場はある程度の上振れを予想済み。会社が通期予想を据え置いたことで上方修正の「お墨付き」がなく、反応は限定的となる。680〜710円のレンジ推移。
ネガティブ・シナリオ(確率:低〜中):Q4に大幅な特損・開発費計上の観測から「好決算だが信用できない」との見方が広がり、材料出尽くしで売り優勢。信用買い残の投げ売りが加速し、668円(直近安値)→650円のサポートを試す展開。
中長期シナリオ(3〜12ヶ月)
中長期の株価は通期決算発表(2026年5月予定)での上方修正の有無に最も強く依存する。仮にFY2026通期の純利益が36億円前後で着地し、FY2027の営業利益がEBITDA 400億円・営業利益130億円という中期計画の中間目標に向けた軌道を示せば、ROEが5〜7%に改善し、PBR 0.65倍からの本格的な再評価が始まる可能性がある。コンセンサス目標株価1,000円前後は、この場合のフェアバリュー水準として合理的だ。
逆に、Q4で大幅赤字を計上し通期純利益が会社計画の15億円近辺にとどまる場合、あるいはFY2027ガイダンスが期待を下回る場合は、過去の「売上は伸びるが利益が伴わない」パターンへの失望から、470円の52週安値を再度試す展開もありうる。
投資判断に向けた結論
レノバの3Q決算は、全7基のバイオマスプラント通年稼働による営業レバレッジの発現という構造変化を裏付ける内容だった。進捗率242.9%は見かけ上のインパクトが大きいが、本質的に重要なのは、売上成長が初めて利益成長に確実に転化し始めた点にある。PBR 0.65倍・コンセンサス目標株価比34〜60%のディスカウントは、この構造変化が持続可能であれば過度に悲観的な水準だ。
しかし、信用倍率7.56倍の需給の歪み、下降トレンド継続というテクニカル環境、そしてアナリスト全員Neutralという市場の慎重姿勢は、短期的な株価回復の速度を制約する。蓄電事業の本格的な収益貢献(2028年以降)までは利益の質に対する市場の懐疑が続く可能性が高く、株価の本格反転には通期上方修正とFY2027ガイダンスという明確なカタリストが必要と考えられる。再エネ政策の強力な追い風(第7次エネルギー基本計画、GX-ETS、データセンター需要急増)は中長期のストーリーを支えるが、レノバ固有のリスク(高レバレッジ、建設遅延の歴史、無配継続)が個別銘柄としてのリスクプレミアムを高めている状況は変わっていない。




















コメントを残す