「小説家になろう」アカウント削除からの再登録がバレる仕組みと運営の対策



「小説家になろう」(以下、なろう)で規約違反をしてアカウントが停止された…。でも、新しいアカウントを作ればまた楽しめるはず!そう考えていませんか?実は、なろう運営はそんなに甘くありません。追放されたユーザーが簡単に復活できないよう、様々な技術で分析して目を光らせています。

この記事では、なろうがどのようにして追放ユーザーを特定し、再登録を防いでいるのか、その具体的な方法を分かりやすく解説します。特にスマホユーザーの方にも読みやすいよう、ポイントを絞ってご紹介します。

なぜバレる?「なろう」の技術的ガードレール:追放ユーザーをどう見破る?

なろうは、追放ユーザーの「再侵入」を防ぐために、いくつかの技術的な「関所」を設けています。主なものを詳しく見ていきましょう。

1. IPアドレス:最初の関門

最も基本的なのがIPアドレスによる追跡です。IPアドレスは、インターネット上の「住所」のようなもの。なろうは、ログインや活動時のIPアドレスを記録しています。

  • 追放アカウントのIPを記憶:追放されたアカウントで使われていたIPアドレスから新しいアカウントが作られようとすると、システムが警告を発します。
  • 複数アカウント禁止の徹底:なろうの規約では、一人で複数のアカウントを持つこと、特に追放されたユーザーの再登録を固く禁じています。IPアドレスのチェックは、このルールを守らせるための主要な手段です。
  • 同一IPからの新規登録はブロック対象:追放されたアカウントと同じIPアドレスからの新規登録は、多くの場合ブロックされるか、登録できても後で削除されます。ユーザー報告によると、同じグローバルIPから作られたアカウントは重複と見なされ、許可されません。
  • 警告と削除のリスク:もし登録に成功したとしても、運営から警告メールが届き、アカウントが削除される可能性が高いです。
  • 家族共有IPの注意点:家族で同じインターネット回線を使っている場合、注意が必要です。事前に運営に相談しない限り、なろうのシステムは一つのIPアドレス上の複数のアカウントを規約違反と判断することがあります。
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IPアドレス…なんだか難しそうな響き

2. クッキーと端末情報:見えない足跡

IPアドレスだけでなく、なろうはクッキーやその他の端末データも利用して、再訪ユーザーを認識している可能性が高いです。

  • プライバシーポリシーでの明記:なろうのプライバシーポリシーには、IPアドレスなどのユーザー情報を収集し、ユーザーのブラウザでクッキーを使用することが明記されています。
  • 追放時のマーカー:アカウントが追放されると、なろうはブラウザ内に永続的なマーカー(クッキーやローカルストレージなど)を残すと考えられています。
  • 同一端末からの再登録は即特定:クッキーを消去せずに同じ端末で再度登録しようとすると、以前追放されたユーザーとして即座に特定される可能性があります。
  • 端末変更の必要性:多くのユーザーが、IPアドレスを変更しても(例:Wi-Fiルーターを変える、スマホのSIMを変えるなど)、同じ端末を使っていると新しいアカウントがすぐに削除されることを経験しています。これは、端末の「指紋」ともいえる情報やクッキーが関与していることを示唆しています。
    ある追放されたユーザーは、同じスマートフォンから登録を試みたものの、再登録するたびにアカウントがシステムによって「すぐに削除された」と嘆いていました。他のユーザーから提案された解決策は、端末自体を完全に変更すること、例えば新しいスマートフォンを入手することでした。

3. ブラウザフィンガープリント:個性を捉える技術

さらに高度な技術として、ブラウザフィンガープリンティングがあります。これは、ブラウザや端末の「個性」を識別する技術です。

  • 詳細な端末情報の収集:ユーザーがサイトにアクセスすると、なろうはIPやホスト情報だけでなく、OS、ブラウザの種類、ディスプレイ解像度、色深度などの端末パラメータも確認できます。これらの特性の組み合わせが、ブラウザや端末をほぼ一意に識別するための「指紋(フィンガープリント)」として機能します。
  • 「同一端末」の判断基準:なろうのサポートフォーラムでは、IPやユーザー環境情報、場合によっては固有の端末IDなど、様々な情報を使って「同一端末」を判断していることが示唆されています。
  • IP変更だけでは不十分:追放されたユーザーがIPアドレスを変更しても(例:ルーターを再起動したりVPNを使用したりしても)、サイトはフィンガープリントによって端末を認識する可能性があります。
    なろうコミュニティのメンバーは、本当に検知を回避するにはIPと端末/ブラウザの両方を変更する必要があると助言しています。なぜなら、システムは「すべてを識別」し、IPだけを変更しても同じマシンを簡単に検出できるからです。
  • 多角的な追跡:「なろう」のユーザーモデレーターの一人は、「多角的に記録されている…基本的にサイトはすべてを識別し、理解できると想定してください」と述べ、この多角的な追跡に言及しました。

4. スマホの固有ID:逃れられない個体識別?

特にモバイル端末の場合、端末固有のIDが追跡に利用される可能性も指摘されています。

  • 過去のキャリア提供ID:かつて、日本の携帯キャリアはウェブサイトに固有の端末ID(いわゆる個体識別番号)を提供していました。
  • 現代のスマホと識別子:現代のスマートフォンやなろうのウェブインターフェースは、ハードウェアIDを直接公開しないかもしれませんが、なろうは利用可能な端末識別子を引き続き活用する可能性があります。例えば、キャリアメールアドレスや特定の電話機種の情報が記録されるなどです。
  • コミュニティの示唆:なろうQ&Aで言及されているコミュニティの「マニュアル」は、サイトが利用可能であればそのような識別子を利用する可能性を示唆しています。
  • 同一スマホでの複数アカウント作成の結末:同じスマートフォン(同じブラウザ設定、場合によってはユーザーエージェント内の同じデバイス名)を繰り返し新しいアカウントに使用すると、それらの試みはリンクされます。
    自分の小説を宣伝するために10個の偽アカウントを使ったある人物は、新しいスマートフォンを購入しない限り、作成した新しいアカウントが即座に再び追放されることを発見しました。
    このことから、なろうはあるアカウントが追放されると、その端末自体を要注意リストに入れる可能性が高いです。

行動パターン分析:隠れた「同一人物」の影を追う

技術的な特定手段だけでなく、なろう運営はユーザーの行動パターンも分析し、新しいアカウントが追放されたユーザーの「なりすまし」ではないかを見極めます。

1. 複数アカウントの不自然な動き

なろうでよくある規約違反の一つが、自分の作品の評価を不正に上げるために複数のアカウントを作成する行為(いわゆる「自演」「複垢ブースト」)です。なろうは、こうしたパターン分析に長けています。

  • 短期間での大量アカウント作成と同一作品への集中:短期間に作成された多くのアカウントが、すべて同じ作品にだけ評価やブックマークをする場合、これは非常に不自然な動きとして検知されます。
    例えば、ある作者が自分の小説をブックマークし評価するためだけに1日に10個の新しいアカウントを作成した場合、それは非常に目立ちます。なろうの運営はそのような異常を監視しています。
  • ソックパペット(自作自演アカウント)の特定:「同じIPから(10人の異なるユーザーのように見える)多数のアカウントがすべて一つの作品にポイントを与えた」場合、それは一人の人物がソックパペットを使っていることを明確に示唆します。
  • IP変更だけではごまかせない行動パターン:たとえ偽アカウントごとにIPアドレスを変更しようとしても、複数の新しいアカウント(特に異常に近いタイミングで作成されたもの)がすべて特定の小説を評価するというパターン自体が、不自然なものとして際立ちます。
  • 長年のデータに基づく異常検知:なろうには10年以上の膨大なユーザーデータがあります。例えば「2025年5月以降に作られたアカウントだけが特定の物語に集中的に評価している」といった状況は、通常の読者行動と比較して「非常に不自然」と判断されやすいです。
  • 自動チェックシステムの可能性:このようなシナリオに対して、なろうは自動チェックシステムを導入している可能性が高いです。結果として、大規模なポイント水増しを試みたユーザーは捕らえられ追放され、彼らが作成する新しいアカウントは、システムが同じ活動パターンを認識するため、ほぼ即座に削除されます。

2. アカウント年齢と怪しい連携プレイ

アカウントが作られた時期と、その行動の関連性も分析対象です。

  • 正規ユーザーとの比較:正規のなろうユーザーは、登録日や読書習慣が様々です。
  • 新規アカウント群による特定作品への集中応援:もし一群のアカウントがすべてごく最近(またはほぼ同時期)に登録され、その唯一または主要な活動が一人の作者の作品を支持することである場合、なろうのアルゴリズムはこれを結託の証拠として扱います。
    あるケースでは、ユーザーが自分自身に約120ポイントを与えるために約10個のアカウントを作成したことを認めました。なろうの対応は迅速で、アカウントは追放され、再登録はすべて即座に削除されました。
  • 不自然な集中投票の検知:アカウント作成の集中と、その直後の協調的な投票行動は、システムが自動的に検出できるパターンです。
  • 短期間での不自然な集中は隠せない:「なろう」に関するあるエッセイで説明されているように、偽のアカウント作成を1週間や1ヶ月に分散させてもあまり意味がありません。なろうの10年以上にわたるユーザーベースの中で、短期間に作成されたアカウントの集団が一つの小説に集中することは「極めて不自然」です。これは、なろうがアルゴリズム、または少なくとも運営のレビューを使用して、新しいアカウントからの評価の急増をフラグ付けしていることを示唆しています。

3. 投稿内容・文体:隠せない作者のクセ

追放された作者が新しいアカウントで復帰し、以前と同じ特徴的なスタイルで投稿を続けたり、あるいは同じコンテンツを再アップロードしたりした場合、これも特定につながる可能性があります。

  • 「ほぼ同一コンテンツ」の再投稿禁止:なろうの規約では、スパムや回避行為の一形態として「ほぼ同一のコンテンツ」を再度投稿することを禁じています。例えば、以前削除された小説を新しいアカウントで「改訂版」として公開することは利用規約違反です。
  • 運営とコミュニティの監視:サイトとそのコミュニティモデレーターは、このようなケースに目を光らせています。
  • コンテンツの類似性による露見:ユーザーが新しいアカウントを作成して削除された小説を再投稿することで追放を回避しようとしても、コンテンツの類似性自体が彼らを露呈させる可能性があります。
  • 読者による指摘と運営の最終確認:場合によっては、読者コミュニティが作者の独特な執筆スタイルやテーマを認識し、新しいアカウントを報告することもありますが、最終的な確認に必要なデータを持っているのはなろう運営です。
  • 運営のみがアクセスできるデータ:なろう運営は一般ユーザーよりも多くのデータ(IPログ、端末情報、過去の投稿内容など)を閲覧できるため、執筆パターンやメタデータ(同一のテキスト、タグ、フォーマットの癖など)を以前追放されたアカウントと関連付けることができます。
  • 再投稿のリスク:新しいアカウントで同じ小説や非常に似た小説を投稿することは、気づかれて再び追放される可能性が高いです。

4. 評価のクセとIPアドレスの一致

ユーザーがコンテンツをどのように評価しレビューするか、そのパターンもチェックされます。

  • 同一人物の可能性:もし二つのアカウントが常に同じ作品群と相互作用したり、類似の評価を与えたりする場合、特に同じネットワーク(IPアドレス)から発信されている場合は、同一人物としてフラグ付けされる可能性があります。
  • 家族・友人間の意図せぬ疑惑:AさんとBさんが同居しており(したがってIPを共有)、両者がなろうアカウントを持ち、お互いの小説を評価し合った場合、システムはこれを一人の人物が二つのアカウントで自己評価していると解釈する可能性があります。
    公式の見解では、共有接続での読書は問題ありませんが、お互いに星やブックマークを与えるために協調することは危険です。
  • 同一IPからの複数評価の継続監視:なろうは、自動チェック(ある回答では、同一IPからの投稿を捕捉するためにCRCのような監視システムが説明されています)を使用して、同じIPからの複数の評価を継続的に「監視」しているようです。
  • 不正使用の強力な証拠:サイトが重複するIPと行動パターン(例えば、同じIPが複数のユーザー名から一つの小説に評価を送信するなど)を、複数アカウントの不正使用の強力な証拠として探していることを意味します。

5. AIも活用?「なろう」の総合的判断

なろうが機械学習(AI)の使用について公に詳述しているわけではありませんが、これまで見てきた様々な要因の組み合わせは、高度なアルゴリズムフィルターとして機能します。

  • ルールベースと統計モデルの可能性:疑わしい行動をフラグ付けするために、ルールベースのシステム(そしておそらくいくつかの統計モデル)を使用している可能性が高いです。
  • 「同一人物判定」の総合性:「IPやユーザーデータを含む様々な情報」を総合的に分析して行われます。例えば、ログインパターンがチェックされるかもしれません。新しいアカウントが追放されたアカウントと同じ時間に、または同じデバイスタイプやIP近傍からログインした場合、それは危険信号を発します。
  • 誤検知を避けるための慎重な対応:サイト運営は慎重を期しており、誤検知を避けるために複数のデータポイントが相互参照されます。例えば、ネットカフェのユーザーがIPを共有することを理解しています。
    (実際、悪意のあるユーザーの活動が同じインターネットカフェのIPから行われたために、無実の作者が追放されたケースがあり、これはIPのみに依存する限界を示しています。)
  • 複数指標による不正確認:このような問題を軽減するため、なろうは複数の指標で不正を確認している可能性が高いです。アカウントが永久に追放されるのは、いくつかの要因(同じIP + 同じ端末フィンガープリント + 疑わしい行動タイミングなど)が一致した場合のみかもしれません。
  • 運営のみが持つ確固たるデータ:コミュニティメンバーが複数アカウントのリンクを「推測」しようとしても、すべての証拠がなければ間違える可能性があります。しかし、なろうのスタッフは確固たるデータ(IPログ、端末情報など)にアクセスでき、それを使用して確信を持って判断を下します。

まとめ:「なろう」の鉄壁ガードを突破するのは至難の業

「小説家になろう」は、追放されたユーザーの復帰に対して、二重三重の防御策を講じています。

  1. 技術的な追跡:IPアドレスの追跡、クッキーの使用、ブラウザフィンガープリントや端末IDの活用により、追放アカウントに関連付けられたデバイスを特定します。
  2. 行動パターンの監視:アカウントの作成方法や利用状況を監視し、特定作品の不自然な応援、コンテンツの繰り返し投稿、異常な評価行動など、複数アカウントの不正利用を示すパターンを検知します。

これらの措置は、「一人一アカウント」「追放は永久」といった明確な利用規約と、コミュニティによる監視によってさらに強化されています。

つまり、なろう運営は、技術的な追跡と巧妙なパターン分析を組み合わせることで、規約違反者が新しい顔でこっそり戻ってくるのを効果的に阻止しているのです。

これを回避する唯一確実な方法があるとすれば(もちろん推奨はしませんが)、追放されたユーザーがIPアドレス、使用端末、ブラウザ環境、さらには執筆スタイルに至るまで、すべてを変更することでしょう。これは、逆説的になろうの識別メカニズムがいかに堅牢であるかを物語っています。



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