目次
- 1 【完全版】2026年骨太の方針を徹底解剖|診療報酬トリプル改定から先端技術戦略まで全政策を網羅
- 1.1 目次
- 1.2 第1章:骨太の方針とは何か ー 日本の政策決定の中枢神経系
- 1.3 第2章:2026年度最大の焦点 ー 6年に一度の同時報酬改定
- 1.4 第3章:石破政権の独自色 ー 「地方創生2.0」が変える政策の力学
- 1.5 第4章:財政健全化目標の修正が意味するもの
- 1.6 第5章:防衛費43兆円が生み出すゼロサムゲーム
- 1.7 第6章:賃上げ政策の内在的矛盾と展開
- 1.8 第7章:全世代型社会保障の構築と医療・介護制度改革
- 1.9 第8章:こども・子育て政策の大転換
- 1.10 第9章:デジタル化(DX)の全面展開
- 1.11 第10章:グリーントランスフォーメーション(GX)戦略
- 1.12 第11章:観光立国と文化・スポーツ振興
- 1.13 第12章:国民の安心・安全の確保
- 1.14 第13章:研究活動の推進と先端技術戦略
- 1.15 第14章:ビジネスと投資への戦略的インプリケーション
- 1.16 よくある質問(FAQ)
- 1.17 まとめ:2026年度骨太の方針が示す日本の未来
【完全版】2026年骨太の方針を徹底解剖|診療報酬トリプル改定から先端技術戦略まで全政策を網羅
2026年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)は、日本の社会保障制度の将来を決定づける極めて重要な転換点となります。本記事では、石破政権下で策定された「骨太の方針2025」を基点に、進行中の政治・経済動向から2026年度の全政策の方向性を完全網羅して分析します。
目次
- 第1章:骨太の方針とは何か ー 日本の政策決定の中枢神経系
- 第2章:2026年度最大の焦点 ー 6年に一度の同時報酬改定
- 第3章:石破政権の独自色 ー 「地方創生2.0」が変える政策の力学
- 第4章:財政健全化目標の修正が意味するもの
- 第5章:防衛費43兆円が生み出すゼロサムゲーム
- 第6章:賃上げ政策の内在的矛盾と展開
- 第7章:全世代型社会保障の構築と医療・介護制度改革
- 第8章:こども・子育て政策の大転換
- 第9章:デジタル化(DX)の全面展開
- 第10章:グリーントランスフォーメーション(GX)戦略
- 第11章:観光立国と文化・スポーツ振興
- 第12章:国民の安心・安全の確保
- 第13章:研究活動の推進と先端技術戦略
- 第14章:ビジネスと投資への戦略的インプリケーション
この記事で分かること
- 6年に一度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の同時改定の全貌
- 賃上げ・社会保障・財政規律の「トリレンマ」とその打開策
- 石破政権「地方創生2.0」が医療・介護政策に与える影響
- 43兆円防衛費が他の政策分野に与える予算的制約
- 医療DX、ウラノス・エコシステム、GX戦略の詳細
- 観光立国6,000万人目標とスポーツツーリズム戦略
- サイバーセキュリティ戦略と防衛装備移転の展開
- AI、量子、フュージョンエネルギーなど先端技術投資
- こども政策の財源革命と支援金制度の創設
- 年収130万円の壁対策と中小企業賃上げ支援策
第1章:骨太の方針とは何か ー 日本の政策決定の中枢神経系
「骨太の方針」は単なる政府文書ではありません。それは日本の政策決定の中枢神経系として機能し、各省庁や利益団体による文言の追加・修正をめぐる攻防は熾烈を極めます。
1.1 骨太の方針の基本的性格
「骨太の方針」、正式名称を「経済財政運営と改革の基本方針」は、2001年から始まった日本の経済財政政策の基本的な方向性を定める最重要文書です。
項目 | 内容 |
---|---|
決定時期 | 毎年6月から7月にかけて(2025年は6月6日に原案公表) |
決定プロセス | 経済財政諮問会議での審議を経て閣議決定 |
主な機能 | 翌年度の予算編成の基本方向を規定 |
重要性 | 特定の政策課題が盛り込まれるか否かが、その後の予算化や法制化の可能性を大きく左右 |
実行力 | 各省庁に改革案を策定させるための実行力を伴う仕組み |
1.2 政権交代による方針の変化
方針の副題は、政権の優先課題の変遷を明確に示しています:
骨太の方針2025では、30年間続いた「コストカット型経済」が終焉を迎え、「成長型経済」への移行基盤が整いつつあるという認識が示されています。
第2章:2026年度最大の焦点 ー 6年に一度の同時報酬改定
2.1 なぜ同時改定が重要なのか
6年に一度の同時改定は、日本の社会保障をめぐるあらゆる論争が集約される一大決戦の場となります。その影響は以下の通りです:
- 数百万人の医療・介護従事者の賃金に直接影響
- 数万の医療機関や介護事業所の経営を左右
- 現役世代が支払う保険料の増減を決定
- 国家財政に大きなインパクト
医療・介護・障害福祉の処遇改善については、過去の報酬改定等の効果を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討されます。
2.2 医療界の危機的状況 ー 「真水」改定要求の背景
医療界、特に病院団体は、他の財源削減で相殺されない純増、すなわち「真水」での大幅なプラス改定を一致して要求しています。その根拠となるデータを見てみましょう。
第24回医療経済実態調査が示す厳しい現実
施設種別 | 損益率 (コロナ補助金除く) | 損益率 (コロナ補助金含む) | 赤字施設の割合 (コロナ補助金除く) |
---|---|---|---|
一般病院 | ▲6.4% | – | 65.5% |
一般診療所 | 5.6% | – | 26.8% |
出典: 第24回医療経済実態調査(令和3-4年度平均)
病院団体の主張の要点
- 約7割の病院がコロナ補助金を除くと赤字経営
- 医薬品費、光熱費、人件費の急騰が経営を圧迫
- 他産業並みの賃上げ実現には「真水」での改定が不可欠
- 地域医療の崩壊が現実的な危機として迫っている
- 物価や賃金の上昇を自動的に報酬に反映させる新たな仕組みの導入を要求
- 病院の利益率は低下の一途をたどっている(中医協でも確認)
2.3 財務省・財政審の反論 ー 効率化と負担の論理
財務省の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)は、全く異なる視点から以下の主張を展開しています:
財政審の主要な論点
- 社会保障給付費の伸びが経済成長を大幅に上回る
- 現役世代に過大な負担を強いている現状
- 診療報酬・介護報酬が1%上昇すると、保険料負担は約3000億円増加
- 医療機関間の経営格差に注目
- 無床診療所の利益率:8.6%(2023年度)
- 全産業平均を大きく上回る高収益
- 「メリハリのある」改定の必要性
- 一律のプラス改定ではなく、的を絞った対応
- 高収益施設への報酬引き下げも視野
財政審が提案する具体的な改革案
報酬の見直し
- 「機能強化加算」の廃止・統合
- 「外来管理加算」の見直し
- 高収益診療所への的を絞った引き下げ
患者負担の増加
- OTC類似薬の保険給付範囲見直し
- 入院時の室料負担の導入
- 自己負担割合の引き上げ検討
- 高額療養費制度の見直し(2025年秋決定)
構造改革の加速
- 後発医薬品の使用促進
- 薬価制度の抜本的見直し
- 地域医療構想による病床削減
- 費用対効果評価に基づく価格設定
2.4 政府の戦略:第三の道としての構造改革
提供側、納税者、財政規律派という三者の要求を同時に満たすという不可能なトリレンマに直面した政府は、効率化を約束する構造改革を強力に推進することで活路を見出そうとしています。
医療DXによる効率化戦略
骨太の方針2025では、医療DXが最優先課題として位置づけられています:
- マイナンバーカード保険証:2025年12月までに原則移行
- マイナンバーカードと各種医療・介護関連証の連携:2026年度以降に全国的な運用を順次開始
- 全国医療情報プラットフォームの整備
- 標準型電子カルテの普及促進
- AI診断支援の活用推進
- 電子処方箋:2025年夏を目途に新たな導入目標設定、普及促進施策を速やかに実施
DXによる事務負担軽減と生産性向上で、財源投入を最小限に抑える狙いです。
第3章:石破政権の独自色 ー 「地方創生2.0」が変える政策の力学
3.1 数字が物語る政策シフト
石破政権の政策的特徴は、文書分析からも明確に読み取れます:
キーワード | 2024年版での出現回数 | 2025年原案での出現回数 | 変化率 |
---|---|---|---|
「地方」 | 70回 | 128回 | +82.9% |
「投資」 | (基準値) | 相対的に低下 | – |
「研究」 | (基準値) | 相対的に低下 | – |
3.2 地方創生2.0の具体的目標
地方創生2.0の野心的な目標設定
- 医療・介護サービス:全ての市町村での維持・確保
- 交通空白地域:2025-2027年の集中対策期間で約2,000地区の解消、約460地点の交通結節点の解消に目途
- 若者の流れ:東京圏から地方への流れを倍増(特に20代女性の転入超過対策)
- 地方イノベーション創生構想の推進
- ふるさと住民登録制度:二地域居住者を対象に創設
- 関係人口の拡大施策
- 無人自動運転移動サービス:2027年度までに100か所以上で実現
- 「週一副社長」のような兼業・副業の促進
- ローカル・ゼブラ(社会的企業)の育成支援
- ライドシェア:2025年度内に配車アプリが普及していない地域での運用拡大
「地方創生」は長年スローガンとして掲げられてきたが、石破政権下でのこの動きは単なる修辞的なものではない。人口減少が進行する地域における社会インフラの維持という、より切迫した課題への現実的な対応である。
3.3 地方創生と社会保障政策の交点
地方政策と社会保障政策が不可分であることは、以下の施策からも明らかです:
3.4 地方働き方改革と女性活躍
若者や女性の東京圏への転入超過が特に20代で顕著であり、男性に比べ女性が地方に戻らない傾向にある現状を踏まえ:
- 「地域働き方・職場改革ネットワーク」を形成
- 今後3~5年で成果を全国に波及させることを目指す
- 地方での働き方・職場改革を起点とした社会変革に取り組む
第4章:財政健全化目標の修正が意味するもの
4.1 プライマリーバランス黒字化目標の変更
項目 | 従来の目標 | 新たな目標 |
---|---|---|
PB黒字化時期 | 2025年度 | 2025年度から2026年度を通じて、可能な限り早期 |
背景要因 |
|
4.2 歳出改革の継続と社会保障
2025年度から2027年度までの3年間、これまでの歳出改革努力を継続する方針ですが、社会保障関係費については:
- 高齢化による増加分だけでなく、経済・物価動向等を踏まえた増加分を加算
- ただし「これまでの歳出改革努力を継続する」という文言も残存
- 医療界からは批判の声も上がっている
4.3 公共事業における価格転嫁
公共事業関連の施策
- 近年の資材価格高騰の影響を考慮
- サプライチェーン全体での価格転嫁を促進
- 公共事業量を確保
- 少額随意契約制度の基準額引き上げ(2025年4月1日より)
- 国の工事契約:250万円→400万円
- 地方公共団体も同様の措置
第5章:防衛費43兆円が生み出すゼロサムゲーム
5.1 固定化された最優先事項
政府は、2022年に策定された「国家安全保障戦略」に基づき、2023年度から2027年度までの5年間で総額43兆円規模の「防衛力整備計画」を着実に実行しています。
43兆円防衛費の財政的インパクト
- 他のあらゆる歳出分野に対する強力な予算的制約として機能
- 防衛に配分される1円は、増税か国債増発なしには他分野に回らない
- 各省庁間の熾烈なゼロサムの予算獲得競争を生み出す
- 財務省が社会保障費の抑制に強硬な姿勢を示す最大の要因の一つ
5.2 防衛関連施策の展開
防衛・安全保障関連の具体的施策
- 防衛装備移転の推進
- 基金の活用による支援
- 国際装備展示会への出展促進
- 防衛装備の海外移転を積極推進
- シェルター確保
- 武力攻撃を想定した地下施設の一層の確保
- 2025年度中の実施方針策定
- 南西地域の住民避難
- 広域的な避難および受け入れに関する検討
- 先島諸島からの住民避難に係る受け入れ基本要領を2026年度中にまとめる
第6章:賃上げ政策の内在的矛盾と展開
6.1 「減税より賃上げ」の基本方針
骨太の方針2025の核心は、「賃上げこそが成長戦略の要」という思想にあります:
賃上げ目標と具体的施策
- 全体目標:2029年度までの5年間で、日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇の定着
- 最低賃金:2020年代に全国平均1500円
- 中小企業支援:「賃金向上推進5か年計画」
- 価格転嫁の徹底
- 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知広報
- 「中小受託取引適正化法」の執行強化
- 中小企業者に関する国等の契約における物価上昇に伴うスライド対応や期中改定
- 生産性向上支援(特にサービス業)
- 事業承継・M&Aによる経営基盤強化
- 地域の人材育成と処遇改善
- 価格転嫁の徹底
- 特定産業への支援
- 建設業、自動車運送業、警備業、ビルメンテナンス業
- 労務費の価格転嫁促進や適切な単価設定を推進
- 人手不足業種への集中投資
- 飲食業、宿泊業、小売業など12業種
- 2029年度までに官民で約60兆円の生産性向上投資
6.2 年収の壁対策
年収130万円の壁への対応
2025年度中に、労働時間延長や賃上げを通じて収入を増加させる事業主への支援を実施
- 社会保険料負担の急増を回避する仕組みの構築
- パート労働者の労働参加促進
- 企業の人手不足解消への貢献
6.3 公定価格セクターのジレンマ
ジレンマの要素 | 内容 | 影響 |
---|---|---|
公定価格の据え置き | 医療・介護の賃金が民間に追随できない | より高賃金の産業への労働力流出 |
公定価格の引き上げ | 社会保障支出の増大 | 財政規律の維持という目標と衝突 |
人手不足の深刻化 | 基幹的サービス分野の人材確保困難 | サービスの質低下・地域格差拡大 |
第7章:全世代型社会保障の構築と医療・介護制度改革
7.1 医療提供体制の改革スケジュール
- 国が「地域医療構想」のガイドラインを策定
- 電子処方箋の新たな導入目標設定(夏頃)
- 高額療養費制度の方針決定(秋まで)
- 医師偏在対策の総合的パッケージ検討結果
- 介護保険制度の利用者負担見直し(2割負担の判断基準など)の結論
- 各都道府県で新たな地域医療構想の策定
- マイナンバーカードと各種医療・介護関連証の連携を全国的に順次運用開始
7.2 介護制度改革の方向性
介護分野の主要施策
- 2040年以降を見据えた地域包括ケアシステムの深化
- 中長期的な介護サービス提供体制の確保の方向性を2025年中にまとめる
- 医療・介護の複合ニーズに対応できる効率的で質の高い提供体制
- 介護テクノロジーの社会実装
- 生産性向上と職員の負担軽減
- 介護ロボット、ICT機器の導入促進
- 外国人介護人材の確保・定着支援
- 在留資格の柔軟化
- 日本語教育・生活支援の充実
- 事業者の連携強化
- 協働化・大規模化の促進
- 経営基盤の強化
第8章:こども・子育て政策の大転換
8.1 こども未来戦略の加速化
「こども未来戦略」の加速化プラン(2024~2026年度)が2025年度に本格実施されます。政策の重点は、保育所の待機児童解消といった量の拡充から、保育士の処遇改善など質の向上へとシフトしています。
施策 | 実施時期 | 内容 |
---|---|---|
児童手当拡充 | 実施済み | 所得制限撤廃、高校生まで延長、第三子以降30,000円に増額 |
多子世帯大学無償化 | 2025年4月 | 3人以上の子供を扶養する世帯の授業料・入学金無償化 |
私立高校実質無償化 | 2026年度 | 就学支援金上限引き上げ、所得制限撤廃 |
小学校給食費無償化 | 2026年度 | 全国展開開始 |
出生後休業支援給付 | 2025年度 | 両親とも育休取得で手取り10割相当給付 |
育児時短就業給付 | 2025年度 | 時短勤務選択者への新たな給付制度創設 |
8.2 子育て支援制度のデジタル化
子育て支援のDX推進
- 子育て支援制度のレジストリ(データベース):2025年度中に整備
- プッシュ型情報配信:必要な情報を自動的に配信する仕組みを実現
- 出生届のオンライン化:2026年度を目途に全自治体で実現
- 保育業務のワンストップ・ワンスオンリー化:2026年度以降全国展開
8.3 財源革命:子ども・子育て支援金制度
第9章:デジタル化(DX)の全面展開
9.1 デジタルライフライン全国総合整備計画
政府は、「デジタルライフライン全国総合整備計画」を核として、日本全体のデジタル化を推進しています。
ウラノス・エコシステム
- 産業横断的なデータ連携基盤
- データとAIの好循環を創出
- 次世代半導体の設計から製造に至る国内エコシステムの構築
デジタル人材育成
- 2026年度末までに230万人育成目標
- リスキリング・学び直しの推進
- 産学官連携による実践的教育
アナログ規制の撤廃
- デジタル化を阻む規制の総点検
- オンライン手続きの原則化
- 書面・対面要件の見直し
9.2 ガバメントクラウドと自治体システム標準化
自治体DXの推進スケジュール
- 基幹20業務のシステム標準化
- 全地方公共団体が原則2025年度までにガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行
- 2026年度以降移行のシステムも積極支援
- ガバメントクラウドの機能拡充(2025年4月運用開始)
- 運用経費の低廉化
- 国以外の機関の利用料支払いを円滑化する情報システム
9.3 教育・防災分野のDX
学校DX
- 学校ネットワーク環境改善(2025年度末まで)
- 教師の働き方改革
- 平均時間外在校等時間を2029年度までに約3割削減
- 月30時間程度に縮減(2024年12月目標設定)
- デジタル教材の活用促進
防災DX
- 防災デジタルプラットフォームの早期実現
- 新総合防災情報システムの機能強化
- 被災者支援DXの構築
- マイナンバーカード活用による避難者状況把握(2025年4月成果公表)
第10章:グリーントランスフォーメーション(GX)戦略
10.1 2026年の転換点:排出量取引制度の本格稼働
- これまで任意参加の「GXリーグ」から移行
- 規制という「ムチ」の導入で政治的困難な局面へ
10.2 成長志向型カーボンプライシング構想
GX投資と財源の二段構え戦略
- 先行投資:20兆円規模の「GX経済移行債」
- 将来の歳入
- 2028年からの化石燃料賦課金
- 2033年からの排出量取引オークション収入
- 課題
- 初期の炭素価格が国際水準に比べて低い
- 産業の海外流出(カーボンリーケージ)リスク
- 中小企業の適応支援の必要性
第11章:観光立国と文化・スポーツ振興
11.1 観光立国推進基本計画
2030年に向けた野心的目標
- 訪日外国人旅行者数:6,000万人
- 消費額:15兆円
- スポーツツーリズム関連消費額:3,800億円(2026年まで)
2025年度末までに新たな「観光立国推進基本計画」を策定し、必要な国の財源確保策を具体的に検討
11.2 地方への観光誘客戦略
インバウンド戦略
- 地方空港の受入体制整備
- 持続可能な観光地域づくり
- オーバーツーリズム対策
- 高付加価値旅行者の誘致
文化観光の推進
- アニメツーリズムの促進
- ロケ誘致による地域活性化
- 地域発コンテンツ制作支援
- 有形・無形文化財の活用
国立文化施設の機能強化
- 民間連携の推進
- 先端技術の活用
- 寄付金確保の強化
- 日本文化の魅力発信
第12章:国民の安心・安全の確保
12.1 経済安全保障の強化
経済安全保障推進体制
- 司令塔機能:国家安全保障局を中心とする政府全体の推進体制強化
- サプライチェーン強靭化
- 重要物資の国内生産基盤強化
- 友好国との連携強化
- 技術流出防止
- 機微技術の管理強化
- 研究インテグリティの確保
12.2 サイバーセキュリティ戦略
12.3 国土強靭化と防災
分野 | 施策内容 | 予算規模・時期 |
---|---|---|
防災・減災対策 | インフラ整備の継続 | 年間2.4兆円程度を仮定 |
避難施設整備 | 武力攻撃想定のシェルター確保 | 2025年度中に実施方針策定 |
住民避難計画 | 先島諸島からの避難受入基本要領 | 2026年度中にまとめ |
12.4 食品ロス削減
2030年の食品ロス半減目標達成に向けて:
- 食品寄附のガイドラインを2024年度中に策定
- 食べ残し持ち帰りのガイドラインも同時期に策定
- フードバンク活動の支援強化
第13章:研究活動の推進と先端技術戦略
13.1 科学技術・イノベーション基本計画
13.2 研究力強化の具体策
基礎研究の充実
- 科研費の早期倍増
- 基盤的経費の拡充
- 研究者の資金・時間の確保
- 若手研究者支援の強化
先端技術分野への投資
- AI:基盤モデル開発
- 量子:量子コンピュータ実用化
- フュージョンエネルギー:実証炉開発
- 半導体:次世代製造技術
産学官連携強化
- 大学発スタートアップ支援
- 共同研究の促進
- 知財戦略の強化
- 国際共同研究の推進
第14章:ビジネスと投資への戦略的インプリケーション
14.1 投資立国への道筋
官民投資の野心的目標
- 2030年度:135兆円
- 2040年度:200兆円
将来の賃金・所得増加のため、官民一体となった大規模投資を実現
14.2 業界別の注目ポイントと戦略
ヘルスケア・製薬業界
- 勝ち組となる領域
- 医療DX関連(電子カルテ、データプラットフォーム、AI診断)
- 明確な費用対効果を持つ革新的医薬品
- 入院から外来・在宅へのシフトを支援するサービス
- 介護テクノロジー(ロボット、ICT機器)
- 厳しい価格圧力を受ける領域
- 差別化が困難な既存製品・サービス
- 高収益診療所向けサービス
- 後発品への切り替え対象薬
テクノロジー・DX業界
- 政府がDXを普遍的な解決策として位置づけ → 巨大なビジネスチャンス
- 特に有望な分野
- ウラノス・エコシステム関連(データ連携基盤)
- 次世代半導体の設計・製造
- ヘルステック(医療DX関連)
- アグリテック(農業DX)
- 地方創生と連携した「X-Tech」分野
- 自治体向けガバメントクラウド関連
- サイバーセキュリティソリューション
地域ビジネス
- 「地方創生2.0」のアジェンダと整合させることが重要
- 鍵となる事業領域
- ラストマイル物流
- リモートワークインフラ
- 分散型エネルギー
- 「関係人口」向けサービス
- 自動運転・ライドシェア関連
- 「週一副社長」等の人材マッチング
- ローカル・ゼブラ(社会的企業)支援
観光・文化産業
- 2030年6,000万人目標に向けた成長機会
- 注目分野
- 地方観光インフラ整備
- アニメツーリズム関連事業
- スポーツツーリズム(3,800億円市場)
- 高付加価値旅行商品開発
- インバウンド向けDXサービス
建設・インフラ業界
- 全体的な財政状況は厳しいものの、以下の分野では安定需要
- 的を絞った投資継続分野
- 防衛施設の強靱化(43兆円計画の一環)
- GX関連インフラ(送電網、水素ステーション等)
- 防災・減災対策(年間2.4兆円程度)
- シェルター確保(2025年度中に実施方針策定)
- 少額随意契約基準引き上げで中小事業者にも機会
環境・エネルギー業界
- GX戦略の本格化で大きな転換期
- 成長機会
- 排出量取引関連サービス(2026年本格稼働)
- 再生可能エネルギー事業
- 省エネ・脱炭素技術
- カーボンクレジット事業
- 中小企業向けGX支援サービス
14.3 政策環境をナビゲートするための具体的行動指針
- 審議会の動向を注視せよ
- 財政制度等審議会(財政審)
- 経済財政諮問会議
- 社会保障審議会
- 中央社会保険医療協議会(中医協)
これらの文書を継続的に監視することが不可欠です。
- 「改革」の潮流に乗れ
自社の製品やサービスが政府の構造改革アジェンダにいかに貢献するかという観点から事業提案を構成。
- データ駆動型のアプローチを取れ
政府統計や業界レポートなどの客観的データを用いて、自社の主張を裏付けることが重要。
- 政策の交差点に注目せよ
最大の機会とリスクは、主要な政策分野が交差する領域に存在。例:医療×地方創生×DX
- 地域との連携を強化せよ
石破政権の地方重視姿勢を踏まえ、地方自治体や地域企業との連携が競争優位の源泉に。
よくある質問(FAQ)
まとめ:2026年度骨太の方針が示す日本の未来
2026年度の骨太の方針は、「トリレンマの克服」がメインテーマとなることが確実です。賃上げという政治的要請、社会保障の持続可能性という人口動態上の必然、そして財政規律という経済的現実ー この三つの相克する目標をいかにして両立させるかが、日本の未来を左右します。
特に注目すべきは、6年に一度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の同時改定です。これは単なる予算配分の問題ではなく、日本の社会保障制度の構造転換を駆動する戦略的ツールとして位置づけられるでしょう。
政府は「構造改革」「効率化」「メリハリ」「デジタル活用」といった概念を駆使し、条件付きの歳出という戦略を通じて、全ての目標を同時に追求しようと試みるでしょう。医療DX、ウラノス・エコシステム、GX戦略、地方創生2.0など、多面的なアプローチで課題解決を図ります。
変動する政策環境の中で、各ステークホルダーは政策の交差点に注目し、改革の潮流に乗り、データ駆動型のアプローチで戦略を構築する必要があります。2026年度は、日本が直面する構造的課題への対応が試される、極めて重要な年となるでしょう。
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