目次
橋下徹氏vs参政党:2025年参院選で露呈したメディアと政治の新たな対立構造
2025年7月21日
目次
- 橋下徹氏「北朝鮮」発言の衝撃と背景
- 参政党の憲法構想案が招いた論争
- TBS「報道特集」偏向報道問題の詳細
- SNSで爆発した「偏向報道」批判の実態
- 参政党「日本人ファースト」政策の真相
- メディア不信と「敵対的メディア認知」現象
- 参政党の支持層分析:女性・オーガニック・スピリチュアル
- 神谷宗幣代表の過去発言と論争の数々
- 参政党の組織運営と資金調達の実態
- 今後の展望:政治とメディアの新たな関係性
2025年の参議院選挙は、日本の政治史に新たな1ページを刻みました。2022年に1議席だった参政党が一気に14議席を獲得するという大躍進。そして、その躍進の陰で繰り広げられた橋下徹氏との激しい論戦、メディアとの対立は、現代日本の政治とメディアが抱える構造的な問題を鮮明に浮き彫りにしました。
本記事では、提供された詳細な調査資料を基に、この複雑な問題の全貌を徹底的に解き明かしていきます。
橋下徹氏「北朝鮮」発言の衝撃と背景
2025年7月19日、参院選の終盤に差し掛かったこの日、橋下徹氏の発言が日本中に衝撃を与えました。
「参政党の神谷さんの考えだと、日本は北朝鮮のような国になる」
この過激な発言は、単なる政治的レトリックではありませんでした。その背景には、両者の間に横たわる深い思想的対立と、過去からの確執が複雑に絡み合っていたのです。
発端となった「権力闘争」発言
事の発端は、7月17日に橋下氏が自身のYouTubeチャンネルで語った内容でした。橋下氏は、神谷宗幣氏について「かつて大阪維新の会から権力闘争で放り出された」と言及。これに対し神谷代表は即座に反応し、「嘘までつくようになった」と強く反論しました。
さらに神谷氏は、橋下氏の発言について「どこからか指示でも受けているのか?」という疑問を投げかけ、歴史認識について公開対談を行うことを要求しました。橋下氏は、神谷氏の反応を「感情的な恨み」だとしつつも、対談に応じる姿勢を見せています。
「北朝鮮」という言葉に込められた危機感
橋下氏がなぜ「北朝鮮のよう」という強い言葉を用いたのか。その最大の理由は、参政党が発表した「新日本国憲法(構想案)」にありました。
参政党憲法構想案の問題点
- 現行憲法の103条を33条に大幅簡略化
- 権力分立や基本的人権の保障に関する規定が大きく削減
- 「八百万の神」「徳を積む」といった神道的・道徳的価値観を盛り込む
- 信教の自由や表現の自由の観点から問題があるとの指摘
橋下氏は、このような内容が個人の自由を重視する立場から見て「牽引主義的(けんいんしゅぎてき)」に映り、その根本的な違いが「北朝鮮」という言葉につながった可能性があると報じられています。
経済政策でも激突
憲法問題だけでなく、経済政策についても両者の対立は鮮明でした。橋下氏は参政党が掲げる「積極財政の財源に国債」とする案を「非常に危険」と指摘し、金利上昇のリスクに警鐘を鳴らしました。
神谷代表は、農家への所得補償や子育て費用などで必要となる数十兆円規模の財源について、以下のように述べています:
「金利云々でやってると、もうどんどん経済がシュリンクしていってしまえば、結局税収減るので。ここはリスクを取ってでもやるべきだ」
これに対し橋下氏は、コロナ禍では長期金利が上がらなかったが、現在長期金利が3%程度まで上昇している現状では、金利を気にせずに国債を刷り続けると「大変なことが起きる」と警告。金利が5%になれば、企業は借金ができず、住宅ローンも上がるなど、経済に深刻な影響が出ると指摘しました。
橋下氏は「金利を気にしたら経済がシュリンクする」という神谷代表の意見に対し、「逆逆!」と反論し、市場を見ながら財政運営を行うことの重要性を強調しています。
参政党の憲法構想案が招いた論争
2025年5月、参政党は「創憲プロジェクト」の成果として「新日本国憲法(構想案)」を公式サイトで発表しました。この草案は、全国で行われたワークショップや勉強会に参加した約500人の党員を中心に、約2年かけて策定されたものです。
現行憲法への批判と「創憲」の理念
参政党は現行の日本国憲法について、以下の問題点を挙げています:
- 制定過程の正統性が乏しい
- 日本独自の歴史観が反映されていない
- 国防に関する規定が不十分である
これらの問題意識から、国民主体で一から憲法を創り直す「創憲」を掲げているのです。
構想案の特徴と批判
構想案の主な特徴として、以下が挙げられます:
憲法構想案の特徴
- 簡略化:現行憲法の103条を33条に簡略化
- 平易な表現:「子どもでも読めて覚えられる」ことを目指した
- 基本理念の維持と補完:現行憲法の基本理念である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を維持しつつ、「國體と国民参加」「権理の基盤としての公益」「自立と平和の追及」の3つを補完的に加えた
- 議論の叩き台:この草案を「議論のたたき台」と位置づけ、今後も国民的議論を踏まえた修正を行っていく
しかし、この構想案には批判も多く寄せられています。神谷代表は「国民主権の記述の削除」はデマであると主張しましたが、参政党の憲法構想案には「国は、主権を有し」と記されており、「国民主権」という文言は含まれていないと指摘されています。
TBS「報道特集」偏向報道問題の詳細
2025年7月12日、TBSの「報道特集」が放送した『外国人政策も争点に急浮上〜参院選総力取材』という特集が、大きな論争を巻き起こしました。
番組内容の詳細
この特集では、参政党が掲げる「日本人ファースト」というスローガンに対し、複数の専門家から以下のような批判的な意見が紹介されました:
- 「排外主義をあおる効果がある」
- 「差別的メッセージとして機能している」
- 「ヘイトスピーチに繋がりかねない」
特に問題視されたのは、番組終盤での山本恵里伽アナウンサーの発言でした:
「自分の一票がひょっとしたらそういった身近な人たちを脅かすものになるかもしれない。これまで以上に想像力を持って投票しなければいけないなと感じています」
この発言は、「特定の政党への投票をためらわせている」として、参政党支持層を中心に大きな批判を浴びました。
参政党の厳重抗議とBPO申立て
参政党は、この報道が「選挙報道として著しく公平性・中立性を欠く」「放送倫理に反する」としてTBSに厳重に抗議し、訂正を求めるとともに、BPO(放送倫理・番組向上機構)への申入書を提出しました。
抗議文では以下の点を指摘しています:
参政党の抗議内容
- 「登場した関係者はすべて当党に批判的な立場であり、擁護・理解を示す視点は一切紹介されませんでした」
- 「報道が意図的に偏向されるような事態が許容されれば、日本の政治、そして民主主義の将来に深刻な影響を及ぼしかねない」
- 神谷代表に対して「街頭で刺し殺す」などの脅迫が寄せられている
- 「一方的に当党を批判的に描写する報道姿勢は、暴力を助長しかねない」
TBS側の反論
TBS側は以下のように回答し、「偏向ではなく”問題提起”である」との立場を示しました:
「今回の特集は、参政党が支持を伸ばす中、各党も次々と外国人を対象とした政策や公約を打ち出し、参院選の争点に急浮上していることを踏まえ、排外主義の高まりへの懸念が強まっていることを、客観的な統計も示しながら、様々な当事者や人権問題に取り組む団体や専門家などの声をを中心に問題提起したものです。この報道には、有権者に判断材料を示すという高い公共性、公益性があると考えております。」
弁護士による法的観点からの指摘
弁護士の西脇亨輔氏は、参政党の抗議文について以下のように批判しました:
- 放送のどの点が誤りかという具体的な指摘がない
- 「偏向報道」と断じるだけにとどまっている
- 「問題提起」への政党の姿勢は「抗議」ではなく「説明」であるべき
- 事実に基づいて問題点を指摘することは「政治的公平性」に反しないどころかメディアの本来の役割である
SNSで爆発した「偏向報道」批判の実態
7月12日の「報道特集」放送後、X(旧Twitter)では「偏向」と批判する投稿が大きく盛り上がり、「#報道特集がんばれ」というエールに対し、「偏向」という批判が多数を占める状態になりました。
SNSでの具体的な反応
「参政党、また偏向報道されてる気しかしない。開票くらいきちんと公平にやれやクソメディア」
「選挙ステーション 大越 大下は参政党の神谷代表に喰ってかかったか テレビ朝日また偏向報道したか 偏向報道のテレビ朝日不要 閉局でも全く問題ないのでテレビ朝日閉局で このオールドメディアのテレビ、新聞の偏向報道は害悪 オールドメディアのテレビ、新聞の偏向報道規制が必要」
これらの投稿は、多くの参政党支持者によって相互フォローを呼びかけられ、拡散されています。
「日本人ファースト」を巡る論争
参政党の「日本人ファースト」という主張が「外国人の排斥だ」と報道されることに対し、参政党側は「決して外国人を排除するものではなく、日本人がきちんと生活できる国づくりを優先するという当たり前の考え方」であり、「納税している国民を優先的に支援すべき」という意図であると反論しています。
SNS上では、以下のような意見が多数見られました:
「”不良外国人”の部分をわざと外して騒ぐのはおかしい」「日本のルールや法を守れない者への批判を”差別”にすり替える構図がある」
(20,000超の共感)
「選挙期間中に一方的な報道は公平性を欠く」「報道が自由であるべきなのは当然。ただ、選挙前に一方の立場だけを強調すると、有権者の判断を歪める」
(約4,000の共感)
「TBSの対応は説明になっていない」「”公益性がある”という言葉で本質をごまかしてる。回答になっていないという印象」
(10,000超の共感)
SNS空間の特性と影響
SNSは、本質的に「怒り」「憤り」といった感情を増幅しやすい構造を持っています。ガセネタであっても、感情的な反応を引き起こせば拡散され、「感情のエコーチェンバー」が形成されます。
「#反日」「#石破売国」「#外国人優遇」などの強い言葉がトレンド入りする背景には、ユーザー自身の不満や不安だけでなく、外部勢力による「ボット」を使った「初期ブースト」(最初の拡散)が関与している可能性も指摘されています。
選挙直前に、参政党や日本保守党を支持するアカウントがXで一斉凍結される事案も発生しました。これは「言論封殺」や「選挙介入」ではないかという批判と、「デマ拡散勢力への正当な規制」という賛成意見に二極化し、SNS空間での「表現の自由」と「情報操作」の線引きの難しさを浮き彫りにしました。
参政党「日本人ファースト」政策の真相
参政党の「日本人ファースト」政策は、2025年参院選の中心的なスローガンとして使用されました。しかし、この政策の内容と、それを巡る発言には多くの論争が含まれています。
神谷代表の説明と実際の主張
神谷宗幣代表は、「日本人ファースト」について以下のように説明しています:
「グローバリズムへの対抗であり、日本国民の生活再建を意味する。外国人を全て排除したり、出て行かせたりする意図はない」
しかし、党の主張の核心には一貫して「移民への強硬姿勢」が存在すると指摘されています。彼らは、日本が直面する諸課題の根本原因を「静かな侵略(silent invasion)」と表現し、移民が日本の社会構造や国民の利益を脅かしていると警鐘を鳴らしてきました。
興味深いことに、神谷代表は「日本人ファースト」のキャッチコピーについて「選挙期間中だけのもの」と説明したこともあります。
外国人犯罪に関する発言と事実検証
神谷代表は街頭演説で、以下のような発言をしました:
「良い仕事に就けなかった外国人の方は、資格を取って来てもどっか逃げちゃうわけです。そういった方が集団をつくって万引きとかをやって、大きな犯罪が生まれていますね」
この発言は、外国人と犯罪を結びつけることで偏見を煽る「ど真ん中の外国人差別」と批判されています。
事実検証:外国人犯罪の実態
- 警察庁などの統計によれば、在留外国人が年々増加しているにもかかわらず、刑法犯の摘発件数は2005年をピークに減少傾向
- コロナの影響で微減・微増したものの大きな変化は見られない
- 日本人を含む摘発件数に占める外国人の割合は、過去10年にわたり全体の約2%前後で推移
- 2024年版「犯罪白書」によると、来日外国人の起訴率は日本人を含めた全終局処理人員と比較すると4.2ポイント高いが、これは外国人労働者全体の犯罪率が高いことを示すものではない
外国人への生活保護支給問題
神谷代表は以下のような発言をしています:
「外国人をどんどん受け入れて、生活保護を出してるなんてむちゃくちゃだ。日本人に死ねって言ってるのかよというくらい憤りを覚える」
また、今回の参院選でも「出稼ぎに来ている外国人のいろんな社会保障まで日本が全部丸抱えするのは、明らかに過剰だ」と主張しています。
事実検証:生活保護の実態
SNS上では「日本人は生活保護を適用せず外国人にばかり生活保護を適用している」「生活保護目当ての外国人が日本に殺到」といった言説が拡散されていますが、これは完全なデマであると指摘されています。
日本人賃金停滞の要因についての誤解
神谷代表は参院選の街頭演説で、以下のように主張しました:
「安い労働力だと言ってどんどんどんどん野放図に外国の方を入れていったら、結局日本人の賃金上がらない」
しかし、過去30年間の日本の実質賃金が上がらない原因は、外国人労働者の増加とは関係がないとされています。
実質賃金停滞の真の要因
- アメリカ、フランス、ドイツなどは日本以上に外国人労働者の数が多いにもかかわらず、いずれの国も30年間で実質賃金が30%以上伸びている
- 近年の物価高と実質賃金の低下は、アベノミクスによる金融緩和政策、非正規雇用の増加、法人税減税による大企業の内部留保拡大など、複合的な要因が影響
その他の誤情報と事実検証
外国人の健康保険未納額
SNS上では「外国人の健康保険の未納額は年間4000億円」というデマが拡散されました。
事実
2022年度の国保未納額全体が約1457億円であり、「外国人だけで4000億円」はありえない。日本維新の会・柳ヶ瀬裕文参院議員が後に訂正。
外国人への高額療養費制度の適用
国民民主党の玉木雄一郎代表も、高額療養費制度について「3カ月、日本にいれば外国人でも高額療養費制度が使えます」「数万円を払ったら1億6000万円の治療を受けられる」と発言。
事実
- 2022年3月から2023年2月までの総医療費9兆871億円のうち、外国人の利用はわずか1.4%の1250億円
- 高額療養費制度の支給額9600億円のうち、外国人への支給額は1.1%の111億円
- 厚生労働省:「数字を見ても外国人が特に高額な医療を使っているとは言えない」
外国人の不動産相続税
神谷代表はフジテレビの党首討論で、外国人の不動産相続税について「日本に住んでなければ取りようがない」「海外の人たちは払わなくていい」と発言。
事実
国税庁への確認により、国籍や居住地に関係なく税を支払う必要があり、登記によって不動産の移動は把握でき、差し押さえなどで対応も可能。神谷氏の発言は誤り。
差別用語の失言と反発
神谷代表は2025年7月18日の街頭演説で、党の憲法構想案への批判をめぐり「あほうだ、ばかだ、チョンだとばかにされる」と発言し、直後に発言を撤回して謝罪しました。
この「チョン」という言葉は朝鮮人を差別する表現とされています。神谷氏は「私がちょっとでも差別的なことを言うと、すぐ記事になる」と述べました。
同日、人権団体「コリアNGOセンター」は抗議文を発表し、参政党の選挙戦が「外国人が日本人よりも優遇されている」という事実と異なる主張を繰り返し、差別的・排外的な世論を煽っていると批判しました。
また、同じく18日の街頭演説で、党の外国人政策を批判する人々について「私は反日の日本人と戦っている」「極左暴力集団だ。これを取り締まれない日本の法律がおかしい」と発言しました。
メディア不信と「敵対的メディア認知」現象
参政党を巡る報道と世論の対立は、現代社会におけるメディアと人々の関係性の変化を浮き彫りにしています。
「敵対的メディア認知」とは何か
「敵対的メディア認知」とは、1982年にレバノンでの虐殺事件に関する「比較的中立な」報道を題材にした実験で明らかになった現象です。
実験の内容と結果
- イスラエル寄りの人とアラブ寄りの人が同じニュースを見た
- 双方が「相手側にとって都合の良い報道内容だ」と主張
- 事件に詳しい人ほど、この認知の歪みが顕著に現れる
この実験結果のように、党派性(特定の主義主張への偏り)の強い人が、中立的・両輪併記的な報道に接すると「対立側に偏った内容だ」と判断するようになります。
「認知の歪み」が生じるメカニズム
「認知の歪み」が生じる原因として、以下の2つのメカニズムが作用していると言われています:
- 客観的かつ公平性が担保された報道が、自身が属する陣営に有利な内容を想定している
- 報道された内容について、自分が属する陣営に対してネガティブな情報を優先的に知覚してしまう
そのため、比較的中立性を保った報道であったとしても、受け手次第で「偏向報道」だと認識されてしまうことになります。
社会の分断とメディアへの影響
「敵対的メディア認知」によってマスメディアへの批判が高まることで、以下のような懸念が指摘されています:
- 社会の分断の助長:異なる立場の人々がますます対立を深める
- 権力によるメディア掌握のリスク:批判が「規制」を求める声となり、権力者がメディアを掌握する可能性
- メディアの迎合:メディアがその時々の政権に迎合するような報道をしたり、政権の「御用聞き」になってしまう
- メディア離れと質の低下:視聴者や購読者数が減少し、メディアが発信する情報のレベル・質が低下
変化するメディアと人々の関係性
従来の「4大マスメディア」は、メディアが情報を発信し、視聴者・購読者が受け取るという「一方通行」の特性を有していました。しかし、SNSは受け手自身も発信できる「双方向」のコミュニケーションが可能なメディアです。
SNSの影響力
- X(旧Twitter)の日本国内の月間アクティブユーザー数は約6,658万人
- 総アカウント数は不明ながら休眠アカウントがこれを上回る可能性
- SNSの利用はニュース関連の投稿を知る手段として広く用いられている
SNSの影響力が高まるにつれて、マスメディア不信は不可逆的に進行しています。20世紀には、新聞やテレビが「伝えない」と判断したことについて、多くの国民は知る手段がありませんでした。しかし現在は、インターネットで調べれば、テレビで報道される以上の周辺情報を知ることができます。
「伝えないことの説明責任」
プライバシー保護などに配慮して報道を控えても、SNSでは批判の対象となり、「情報操作」や「忖度」が疑われたり、「マスコミが伝えない不都合な真実」といった陰謀論として拡散されることもあります。
そのため、報道機関には、一見すると語義矛盾のようですが、「伝えないことの説明責任」を果たすことが求められる時代になっているとされています。読者や視聴者の理解を得にくい事案については、ウェブサイトで報道方針を説明するなど、透明性を高める取り組みが重要視されています。
メディアの「バランス」への疑念
メディアが「他の番組でバランスとってます」「他の記事でバランスとってます」と主張することは、「アリバイづくり」に過ぎないと批判されることもあります。特定の番組や記事で偏向的な報道を行いながら、別の場所でバランスを取っていると主張することは、実質的な偏向であるという見方です。
独立した多様なメディア(例:左右両方の出版社が多数存在すること)があることで、初めて言論界全体のバランスが保たれるという意見もあります。
参政党の支持層分析:女性・オーガニック・スピリチュアル
参政党の支持層は、従来の政党の支持層とは異なる特徴を持つと分析されています。
女性層の支持が多い理由
参政党の支持層は、特に女性層に偏りが見られるという衝撃的なデータが示唆されています。これは、以下のテーマが家庭や子供の健康、日々の生活の質を担うことの多い女性にとって、極めて切実な問題であるためと考えられています:
- 食の安全
- 子育て環境の改善
- 教育のあり方
- 代替医療を含む健康維持
「オーガニック」との関連性
支持層における「オーガニック」は、単なる有機栽培食品だけでなく、以下のような広範なライフスタイルや価値観を包含しています:
オーガニック志向の内容
- 化学物質への不信
- 自然との調和
- 持続可能な消費
- 「本物志向」
参政党は、食料自給率の向上、伝統的な食文化の重視、自然療法への理解といった政策を掲げており、これらは自身の健康だけでなく、地球環境、次世代への影響、そして国家の食料安全保障といったより大きな枠組みでの「安心」と「持続可能性」を求める層に強く共鳴しています。
特に子育て世代の女性は、子供の健康と未来に対する責任感が強く、食の安全や環境問題への意識が高い傾向にあり、参政党を「哲学」を持った存在として認識している可能性が指摘されています。
「スピリチュアル」との関連性
さらに驚くべきは、「スピリチュアル」な思想や信念との関連性です。スピリチュアルは、以下のような多岐にわたる概念を含みます:
- 精神性
- 魂の探求
- 目に見えないエネルギーへの関心
- 自己の内面との対話
- ホリスティック(全体論的)な世界観
実際、参院選での候補者には以下のような人物が含まれていました:
スピリチュアル系候補者の例
- 福井県選挙区:「マインドブロックバスター」として活動
- 愛知選挙区:占星術家
- 沖縄選挙区:古事記や大和言葉を教える私塾の代表
- 山口選挙区:タッチセラピー協会の代表
また、和歌山市議選に当選した林元光広の妻は「大調和波動米」を仮想通貨と共に販売しており、落選した宮崎市議選候補はスピリチュアルカウンセラー、知多市議選候補は「ホリスティック宇宙科学者」として「アセンション美容液」や「波動グッズ」を販売しているなど、スピリチュアルや疑似科学との接点が指摘されています。
社会経済的属性と心理的傾向
若年層・無党派層の支持
既存政党離れを起こしている有権者は、無党派層を形成するとともに、新興政党支持に向かう傾向が見られます。特に若年層ほど無党派層が多い右下がりの傾斜を示しており、年齢が上がるほど支持率が上昇するのは自民党や公明党、共産党・社民党といった既存政党に多く見られる現象です。
低年収・悲観的現状評価
ポピュリスト志向の人は、そうでない人と比べて以下の傾向があります:
- 世帯年収が低い傾向
- 1年前と比べて家計や日本の経済状況が悪くなったと答える割合が高い
- 5~10年後の見通しについてもより悲観的
- 階層意識について「中の下」または「下」と回答する割合が高い
「普通の日本人」という自負
参政党の支持者は、自身を「右翼」ではなく「普通の日本人」と自負していると指摘されています。彼らは「反LGBT・反移民」といった政策に共感する一方で、メディアから「頭のおかしい人」と批判されることには反発しています。
社会崩壊感と既存政党への不満
参院選で新興政党を推す若者層には「既成政党が社会を壊している」という「社会崩壊感」が10年で急上昇しているというパニックと絶望感が背景にあるとされています。
ポピュリスト志向との関連
ポピュリスト志向とは「いまの政党や政治家は腐敗しきっており、人びとの敵をやっつける強い指導者が必要」であり、かつ「政策を決定する際は、ふつうの人びとの意見を優先するべきだ」と考えている態度と定義されています。
ポピュリスト志向の特徴
- 最終学歴が高いほど、また世帯年収が多いほどポピュリスト志向にはなりにくい
- 神経症傾向が強い性格の人や、信仰を持っていない人はポピュリスト志向になりやすい
- 将来の社会を楽観視している人ほどポピュリスト志向になりにくい
- 政治不信が強いほどポピュリスト志向になりやすい
- 政治関心が高い人ほどポピュリスト志向になりやすい傾向も見られる
ポピュリスト志向の人々は、既得権益の擁護者に見える既存政党からは疎外感を覚えつつも、政治そのものから離れるのではなく、「新たなリーダーの登場を待っている」状態にあると分析されています。
神谷宗幣代表の過去発言と論争の数々
神谷宗幣代表は、過去にも様々な発言や行動が論争を呼んでいます。
公設秘書の自殺とパワハラ疑惑
2023年12月、神谷代表の公設秘書だった女性が自殺しました。生前、この女性に対して神谷氏が「パワハラ」とも呼べる高圧的な言動を繰り返していたとされ、神谷氏自身も「厳しいことを言ったのは事実です」「責任を感じている」と述べています。
特に、党の重要な収入源であるタウンミーティングの集客が悪いと、厳しい叱責をしていたとされています。
街頭演説での不適切発言
神谷代表の街頭演説での発言は、度々物議を醸しています:
問題視された発言例
- 「国会議員がちゃんと仕事をするならロリコンだったって仕方ないじゃないですか、許してあげましょうよ」
- 「愛人OK」「多夫多妻制」の容認
- 「外資系企業で働いている人は国家観がない」
- 「高齢の女性は子供を埋めない」「人口維持には若い女性に子供を産みたいという社会状況を作らないといけないが働け働けとやりすぎた」
特に女性に関する発言について、神谷氏は以下のように述べています:
「それが正しいと思い込んでる人が結構いたからじゃないでしょうか?私はもうこれはあの訂正する気も謝罪する気も一切なくてですね当たり前のことをしっかり問題提起したと思ってますので国会でも引き続き同じテーマで訴えていきたい」
しかし、「何を言っても誰か傷つく人はいますね」「1億2000万人全ての気持ちに寄り添っていると何も言えなくなってしまう」と述べ、政治発言にはある程度のリスクも覚悟の上で臨む姿勢を示しています。
宮城県の水道事業に関する誤情報
2025年7月13日、仙台市での街頭演説で、宮城県の水道事業について「民営化し、外資へ売った」などと発言しました。
これに対し、宮城県の村井嘉浩知事は、発言は誤った情報であり、県民に不安や動揺を与えたことは看過できないとして、参政党に対し謝罪と訂正を求める抗議文を提出しました。神谷氏は、誤った情報の発信とは言えないとして謝罪を拒否しています。
歴史認識を巡る論争
「ひめゆりの塔」展示を巡る発言
2025年5月、自民党の西田昌司議員が「ひめゆりの塔」の展示説明を「歴史の書き換え」と発言し批判を受けた件について、神谷宗幣代表は「本質的に間違いでない」と擁護しました。
さらに、以下のような発言をしています:
- 「日本軍は県民を殺していない」
- 「沖縄を守るために戦った」
- 「これが党の歴史認識」
また、日本軍の加害の事実は認めつつも「加害だけを強調するのは問題」との認識を示し、『八重山日報』のインタビューでは以下のように語っています:
「日本軍が悪いという言い方だけだと米軍が正義となり、基地返還交渉が不利になる」
「歴史の影の部分を教えるなら、命をかけて沖縄を守った方々のことも同列で報道しないと、本土と沖縄の心理的な分断につながってしまう」
これらの発言に対し、沖縄タイムスや琉球新報など地元メディアは、「加害の矮小化」や「歴史の歪曲」と強く批判しました。
沖縄の識者からの批判
- 沖縄国際大学名誉教授・石原昌家:「守ろうとしたのは天皇制存続で住民ではなかった」「歴史認識の違いではなく、歴史の捏造だ」
- 非常勤講師・川満彰:「玉砕方針により県民を巻き込んだ。感覚で語るべきでない」
- 琉球新報:「戦後教育の否定」「新たな戦前への誘導」といった懸念を示す
治安維持法と共産主義者
2025年7月12日、神谷代表は街頭演説で戦前の治安維持法を肯定する発言を行い、「共産主義者が政府の中枢に入り込み、アメリカやソ連と戦争するよう仕向けた」「教科書に書いてないけど」といった歴史感を示しました。
これに対し、しんぶん赤旗は「人権と民主主義の根幹を否定する危険な発言」と批判しました。
参政党の政策に関する論争
終末期医療の自己負担化
参政党の公約には「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」が含まれています。党は以下のように説明しています:
- 「蓄えもしないと大変だと啓発する思いで入れた」
- 「財政問題の観点から問題提起をしたい」
- 「終末期における過度な延命治療が国全体の医療費を押し上げている」ことが前提
- 「尊厳死法制の整備」も掲げる
しかし、医療経済・政策学の専門家からは以下の批判が出ています:
専門家からの批判
- 終末期医療が全医療費に占める割合は1~2%にすぎず、医療費を押し上げているという認識は誤り
- 「医療や社会保障において世代間対立を煽る内容」
- 「延命治療は経済ではなく人の生き方の問題」
2025年7月13日には、医師らで構成される団体「全国保険医団体連合会」が「いのちを金で切る参政党の公約は異常」と抗議声明を出しました。
公務員に関する発言
神谷代表は2025年7月14日の街頭演説で、公務員について以下のように述べました:
「極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法」
「極左の考え方を持った人たちが浸透工作で社会の中枢に深く入り込んでいると思う」
参政党は公約としてスパイ防止法の制定を掲げています。
参政党の組織運営と資金調達の実態
参政党は、その独自の組織運営と巧みなメディア戦略によって支持を拡大してきました。
資金調達の実態
個人からの資金が9割
2022年度の政治資金収支報告書によると、参政党の収入16億円のうち、約9割(14億円)は個人からのものでした。党費や会費を支払った人数は4万6,524人で、総額3億4千万円を集めています。
「事業収入」の内訳
収入源 | 金額 | 詳細 |
---|---|---|
タウンミーティング | 2.6億円 | 全国各地で有料開催 |
政治資金パーティー | 3.2億円 | 約1万3千人から平均2万円超 |
事業収入合計 | 6.6億円 | 収入の約4割を占める |
政治資金パーティーの実態
参政党は年に2回程度のペースで大規模な政治資金集めのパーティーを開催しています。パーティーでは、習字パフォーマンスやバレエ、漫才などの娯楽的要素が含まれ、有機農法で栽培された野菜などの物販も行われます。
2022年5月8日開催の第1回政治資金パーティー「イシキカイカクサミット」では:
- 神谷宗幣が経営する「イシキカイカク株式会社」が運営を担当
- SS席10万円、S席5万円、一般席2万円という高額なパーティー券
- 5000枚完売し、会場でのグッズ販売も加えて約2億円の政治資金を集めた
- マスクやワクチンに反対する井上正康名誉教授や音楽ユニットHEAVENESEも出演
- HEAVENESEは演奏の合間にユダ王国の「説教」を行った
9人の講師による講義では以下のような主張が行われました:
パーティーでの主張内容
- 「ディープステート(闇の政府)」
- 「国際金融資本による日本侵略」
- 「インバウンドの受け皿はグローバリストの中国人」
- 「新型コロナにワクチンやマスクは役に立たない」
パーティーの動画は2万円で有料配信され、会場での撮影は制限されました。
党資金の個人利用疑惑
2020年度の政治資金収支報告書では、参政党の収入約8,600万円のうち、主な支出に神谷ら幹部への講師料や、神谷が経営する「イシキカイカク株式会社」への支払いが含まれていました。
2022年には、神谷への党資金支払いが政治資金規正法が禁じる「政党から個人への寄付」に該当する可能性が指摘され、以降は「イシキカイカク株式会社」と党が全額出資して設立した「株式会社エドワークス」への支出額が増加しました。
資金の流れに関する疑惑
- 4年間で神谷や関連会社への支払いは約1億円に上る
- 2022年度の政治資金収支報告書では、イシキカイカク株式会社への900万円の振込記録が添付されているにもかかわらず、党の政治資金収支報告書にはこの支出が記載されていない
- 政治資金規正法違反の疑いも指摘
神谷は2023年にイシキカイカク株式会社の代表取締役を妻に譲り、2025年時点では取締役として役員報酬を受け取っています。2023年度の党首所得は2,648万円で、講演料や著書の印税収入を含め、自民党の岸田首相に次ぐ額でした。
メディア戦略とSNS活用
インターネットでの情報拡散
参政党はYouTubeなどのインターネット上で街頭演説の様子が拡散されたことで、2022年4月頃から党員・サポーター数が急増しました。特に街頭演説やメディアインタビューの「切り抜き動画」が100万回再生を超えるなど、その拡散力と注目度の高さが際立っています。
TikTokでも他党を圧倒的な再生数を記録しており、動画系SNSを最大限に活用した戦略が功を奏したと言えるでしょう。
「オールドメディア」批判の活用
ネット上では「オールドメディア」という言葉も飛び交いますが、実際にはネットユーザーもテレビや新聞発の情報に関心を寄せていることが浮き彫りになっています。
参政党は、メディアが「危険」「過激」と評することで、SNS上では「メディアが叩いてる=信じられる」という「逆転のロジック」が発動し、メディア不信層が団結して投票行動に結びつくという「反メディア的共感の結晶化」が、参政党の得票を押し上げたと分析されています。
神谷代表は、メディアや有権者からの指摘や批判に対して以下のように投稿し、メディアへの不信感を煽る姿勢を見せています:
- 「明らかに攻撃のレベルが上がりました。みんなで立ち向かいましょう」
- 「全方位からの攻撃が凄い」
神谷代表の演説スタイル
神谷代表は街頭演説において、台本なしで、その土地や聴衆の年齢に合わせて話を変えることで「ライブ感」を重視しています。これにより、短い言葉で分かりやすくポンと言い切ることで、政治に関心がない人にも立ち止まって聞いてもらうための工夫を凝らしています。
しかし、その結果、「過激な発言の連続になりはしないか」という懸念や、「不適切だなって表現」が出ることが自身でも認識されています。神谷氏は今後、街頭演説の機会を減らし、国会での質疑に時間を割きたいと述べています。
フェイクニュースへの対応
2025年の参院選では、各メディアがファクトチェックや問題発言を報じましたが、連日の演説の量に報道が追いつかない状況でした。神谷代表はファクトチェック記事を「必死ですね」とXで投稿し、メディアの報道姿勢を批判しました。
2025年6月の東京都議会議員選挙期間中には、X上でれいわ新選組が移民政策に賛成しているかのような第三者の誤った投稿画像をリポストし、後に「他党の候補者との比較ができるからと思い、調べずに拡散した。訂正して謝罪したい」と述べ、投稿を削除しました。
組織運営の課題
地方議員の増加と教育の必要性
2022年の参院選で一気に14議席を獲得し、国会議員が急増したことで、神谷代表は以下のように述べています:
「議会質問のあり方とか、国会の運営のルールだったりとか、議員としての立ち振る舞いとか、1個1個教育していかないとですね」
組織の統制に関する課題
橋下徹氏が維新の党を設立した際の経験を引き合いに出し、神谷氏は以下のように語っています:
「わーっと数増えるとですね、みんな結構勝手なことやり出すんですよね。維新という看板で受かっておきながら、まるで自分の力だけで通ったかのように振る舞う人とかもいて、橋下さんが怒ってらっしゃるのを私見たことあるんですけど。それは私も同感ですね。そういう地方議員も結構いたので。ですから、まずやるべきは議員の教育とガイドラインの設定、みんなの共通認識の確立ですね、そこはまだ我々弱いので」
初の代表選挙
2025年5月9日、参政党は結党以来初めての代表選挙を実施し、神谷宗幣氏が再選されました。この代表選は、これまで常任役員会の決議で代表を選出していたのに対し、選任手続きの透明性を示すために行われました。
神谷氏は「外から『独裁だ』と言われている。党員の思いで代表が選ばれる形を内外に示したい」と述べ、選挙管理委員長も「民主主義に基づいた政党であることを示すものなので代表選は非常に重要。ただのセレモニーではない」と意義を強調しました。
陰謀論・疑似科学・カルト的指摘
参政党は、その主張や活動手法において、陰謀論、疑似科学、さらにはカルト的な要素との関連性を指摘されています。
陰謀論の「ストーリー」
陰謀論や悪徳商法などを調査するライターの雨宮純氏は、参政党が支持拡大に用いる「コミュニティ・オーガナイジング(CO)」の背景には、以下のような陰謀論に基づく「ストーリー(物語)」が共有されていると指摘しています:
参政党が共有する「ストーリー」
- 「ユダヤ系を中心とした国際金融資本やグローバリストが日本を脅かし、マスコミや製薬会社が支配されている」
- 「真実に目覚めた『私たち』が団結し、既存体制を倒す」
雨宮氏は、参政党がこうした陰謀論から生まれる「緊急性・怒り・希望」や、代替医療や自然派志向のコミュニティで生まれる「一体感」、イベント参加を通じて得られる「自己効力感」といった感情を通じて、支持者の行動を促進していると分析しています。
反ワクチン・反マスク
参政党はコロナ禍において、ほぼ全員がノーマスクで、ワクチン懐疑論のメッセージを掲げて選挙戦を戦いました。
党のホームページやチラシでは「薬やワクチンに依存しない治療・予防体制強化で国民の自己免疫力を高める」と記載されており、一見すると普通に見えますが、反ワクチン的な思考を持つ人からすれば「ワクチンに反対してくれている」と受け取れるような表現が用いられています。
反ユダヤ主義の指摘
2022年の参議院選挙中には、「参政党は日本をユダヤ資本に売り渡したりしない」と演説したことから、イスラエルの外交官に抗議を受け、国際的なメディアで報道されました。
2022年の編著『参政党Q&Aブック基礎編』では:
「ワクチンや医薬品販売による莫大な利益獲得を目的とする”あの勢力”がコロナ禍の恐怖を過剰に煽るために、新聞やテレビなどのメディアを利用して盛んにマスク着用呼びかけている」
と記述しており、”あの勢力”とは国際金融資本や多国籍のグローバル企業を指すと説明していました。また、著書にはこれらの組織の総称として「ユダヤ系」との記述もあったことが指摘されています。
神谷代表は、2022年8月18日に出演した番組で、これらの見解の妥当性を問われると:
「ユダヤ資本が入ってるのは事実だが、全てユダヤ人がやってるというふうに誤解されるような書き方はちょっとまずかったなというふうに思っていて、今後修正をしていかないといけないなというふうには考えています」
と釈明しました。
2025年7月3日には、参院選公示日に日本外国特派員協会で行われた会見で、『参政党Q&Aブック基礎編』について「(前回参院選直前の)バタバタした状況で作った本だった」「間違いがあり絶版にした」と説明しました。
2024年の改訂版『参政党ドリル』では、「あの勢力」は「国際金融資本家」と説明され、「ユダヤ系」という言葉は用いられなくなりましたが、世界を国際金融資本家が操っているという世界観は維持されています。
主な批判論者の指摘
ライター・雨宮純氏
- 「参政党にとっては反ワクチンや保守は目的ではなく手段であり、真の目的はポピュリズム戦略を利用して票を集めること」
- 「参政党はトンデモ系の人が突然立ち上げたような党ではない」「政治家が本気で議席を取るべく動いてきた結果であり、だからこその怖さがある」
- 「根拠のない治療法を支持したり、スピリチュアルを支持する政治家が生まれることは、国民の健康を危険に晒すリスクや、霊感商法への対応が甘くなるリスクを孕む」
- 「宗教団体だけでなく、オカルトやスピリチュアル、疑似科学と政治家の関係についても監視や批判が行われるべきではないか」
歴史学者・倉山満氏
参政党を「振り切ったトンデモ」と断じています。また、ボードメンバーを務めていたKAZUYAと渡瀬裕哉が参政党から離れたことにより、党がさらに陰謀論やスピリチュアル、ネットワークビジネスといった方向に傾斜したと評しています。
その他の論争と関係性
ロシアとの関連性疑惑
2025年7月14日、ロシア政府系プロパガンダメディア「スプートニク」が、参政党の参院選候補者であるさや氏へのインタビューを公開しました。
翌15日、神谷代表はSNSで「ロシアによる影響工作」との見方を否定し、スプートニクの取材は「末端職員の独断によるものであり、すでに厳正な処分を行った」と説明しました。その後、この職員に辞職勧告をしたことを明らかにしています。
神谷代表は、国民民主党の玉木雄一郎代表が関与したようににおわせるユーザーの投稿に対し:
「どこに問い合わせてもロシアの工作のエビデンスが取れません」
「私も台本があるなと感じて昨日の早い段階で警鐘を鳴らしていたら、案の定でした」
と反撃しました。
他党・団体との関係
旧NHK党との対立
2023年1月31日、神谷副代表が演説会で「NHK党の幹部に極左暴力集団や反社とつながりがある人たちがいる」と発言し、2月2日、参政党と神谷副代表はNHK党(現政治家女子48党)から1億円の損害賠償請求を受けました。
宗教団体との関係性
2022年の参院選では、参政党について宗教やカルト的な性格が指摘され、統一教会や幸福の科学との関係が疑われましたが、現時点で特定の宗教団体との強い結びつきを示す確かな証拠はないとされています。
しかし近年では、幸福実現党の元幹部である及川幸久氏が、参政党のイベントや街頭演説、公式動画などに出演し、候補者と共に活動していることが指摘されています。
「ヤマト・ユダヤ友好協会」との関係
神谷宗幣代表は「ヤマト・ユダヤ友好協会」の理事を2022年7月まで務めていました。
保守系団体との連携
2023年5月、神谷代表は「新しい歴史教科書をつくる会」の集会に参政党の国会議員として登壇し、国政報告を行いました。
自民党との会派
2025年7月16日、神谷代表はXで以下のように述べました:
「会派を組んでいるのは自民党の議員とだけではないです」
「共産党以外の政党ならどことでも会派組んでいいと通達してある」
すでに各党との調整が済んでいることを明らかにし、自民党と参政党はすでに新宿区、江東区、所沢市、旭川市、仙台市、一宮市、箕面市、武雄市など、全国12の区市議会で会派を組んでいます。
まとめと今後の展望
参政党の躍進は、日本の政治における「政治のサイコグラフィック化」という新たな潮流を鮮明に示しています。これは、政治が経済や社会の構造変化だけでなく、個人の内面性、消費行動、そして倫理観の多様化によって形成される、より複雑なものへと変容していることを示唆しています。
参政党は、インターネットやSNSを駆使した独自の選挙戦略、地方に根ざした地道な活動、そして既存政党への不満や社会不安を捉えたメッセージによって支持を拡大してきました。特に、女性層やオーガニック・スピリチュアル志向を持つ人々といった、従来の政治が十分に拾いきれていなかった層のニーズと価値観に深く寄り添ったことが、彼らの心を掴む要因となりました。
しかし、その急激な成長は、外国人政策における差別的・排他的な主張、陰謀論や疑似科学との関連性、組織運営や資金利用に関する疑惑といった、様々な論争と批判に直面しています。
また、メディアとの対立においては、「偏向報道」という主張の背景に『敵対的メディア認知』の現象があること、そして情報発信の主体が多様化し、有権者が「ファクトよりも”解釈”が主導権を持つ時代」に突入している現状が浮き彫りになりました。
今後、政治家や政党は、従来の政治課題に加え、個人のライフスタイルや倫理観、そして多様な精神性といった価値観に寄り添い、それらを政策やメッセージに反映させることが、新たな支持層を獲得し、有権者との深い信頼関係を築く上で不可欠となるでしょう。
この動きは、日本の政治が、より多角的で、市民一人ひとりの「生き方」に根ざした議論へと進化していく可能性を秘めていると同時に、特定の価値観に基づく排他的な政治的アジェンダ形成のリスクも内包しているという、深い示唆を私たちに与えています。
有権者が日本の国や社会にとってより良き選択をする「投票の質」を向上させるためには、こうした多角的な視点から、参政党の台頭が示す政治・選挙史の転換点を理解し、メディアと情報のあり方、そして私たち一人ひとりがネットとどう向き合うかが問われています。
橋下徹氏と参政党の対立、そしてメディアとの衝突は、単なる一時的な政治的出来事ではなく、日本の民主主義が直面する根本的な課題を象徴しているのかもしれません。
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