奨学金の変動金利が850倍に急騰、上限3%到達も視野に|借入や返済に関する注意点



目次

この記事の結論

日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金(有利子)の金利が歴史的な急上昇を続けている。「変動金利が850倍になった」という衝撃的な数字がSNSで拡散されているが、これは事実である。2021年3月時点で0.002%だった利率見直し方式の金利は、2025年1月時点で1.700%へと上昇し、倍率計算では約850倍となった。

2026年1月時点で利率固定方式は2.512%に達し、法定上限の3%まであと0.5ポイント弱に迫っている。日銀は2026年後半にも追加利上げを行う見通しであり、奨学金利率がさらに上昇する可能性は高い。

一方で、政府は多子世帯への授業料無償化、代理返還制度の普及促進、減額返還制度の大幅緩和など支援策を着実に拡充している。奨学金を取り巻く環境は「高利率時代の到来」と「返還支援の充実」という両面で大きく変化しており、正しい知識に基づいた戦略的な対応が求められる。

2026年1月の最新利率:固定方式が2.5%超に

JASSOが公表している第二種奨学金の最新利率(2026年1月貸与終了者適用分)は以下の通りである。

2026年1月時点の適用利率

区分利率固定方式利率見直し方式
基本月額2.512%1.700%
増額部分2.712%1.900%

利率固定方式は法定上限3.0%の約84%水準に達しており、このペースが続けば2026年後半〜2027年に上限到達の可能性がある。

過去1年間の利率推移(基本月額)

貸与終了月利率固定方式利率見直し方式
2025年1月1.440%0.900%
2025年4月1.612%0.900%
2025年7月1.912%1.200%
2025年10月2.012%1.300%
2025年12月2.312%1.600%
2026年1月2.512%1.700%

わずか1年間で利率固定方式は+1.072ポイント、利率見直し方式は+0.800ポイントの上昇を記録した。2020〜21年頃の超低金利時代(固定0.1〜0.3%、見直し0.002〜0.04%)と比較すると、まさに隔世の感がある。

参照:JASSO「平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率」

なぜ「850倍」という異常事態が起きたのか

「奨学金の金利が850倍になった」という数字は衝撃的だが、これは統計的なトリックではなく事実である。ただし、その数字の意味を正確に理解する必要がある。

「850倍」の正体

2021年3月時点の利率見直し方式は0.002%という異常なほどの超低水準だった。これが2025年1月に1.700%へ上昇したため、倍率計算では約850倍となる。利率そのものは1.698ポイントの上昇だが、分母(過去の金利)があまりに低かったため、倍率が極端に大きくなった。

金利急騰の3つの構造的要因

1. 日銀の政策転換(異次元緩和の終了と利上げ)

2013年から続いた「異次元の金融緩和」が終焉を迎えた。日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、その後も段階的に利上げを継続。2025年12月には政策金利を0.75%まで引き上げ、1995年以来約30年ぶりの高水準となった。

2. JASSOの資金調達コスト上昇

JASSOの奨学金は、国からの借入金(財政融資資金)や債券発行(機構債)によって賄われている。これらの調達金利は市場の長期金利(10年国債利回り)に連動するため、国債利回りの上昇がそのまま学生への貸与利率に転嫁される仕組みとなっている。2026年1月には新発10年国債利回りが一時2.27%まで急騰した。

3. インフレ(物価上昇)の定着

資源高や円安に加え、「賃金と物価がともに上がる」という経済構造への変化が起きている。物価上昇率が2%を超える状況が常態化し、日銀がそれを追認する形で利上げを継続しているため、金利が下がる余地がなくなっている。

日銀の金融政策と今後の利上げ見通し

2026年1月金融政策決定会合の決定内容

日銀は2026年1月23日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)を0.75%に据え置きとした。高田創審議委員が1.0%への引上げを提案したが、8対1で否決された。

利上げの経緯

時期政策金利備考
2024年3月マイナス金利解除歴史的転換点
2024年7月0.25%利上げ開始
2025年1月0.50%17年ぶり水準
2025年12月0.75%30年ぶり水準

主要シンクタンクの利上げ予測

複数のシンクタンクは2026年6〜7月の追加利上げを予測している。

機関次回利上げ時期ターミナルレート
野村證券2026年6月1.50%(2027年6月)
三井住友DSアセット2026年7月1.50%(2027年7月)
野村総合研究所2026年9月1.25%(2027年6月)
大和総研2026年中に2回1.25%以上

OIS(翌日物金利スワップ)市場では、2026年7月会合での25bp利上げをほぼ完全に織り込んでいる。円安が165円を超える場合は利上げ加速、逆に米国経済の下振れがあれば後ずれの可能性がある。

参照:野村證券「日銀の追加利上げ予想」

金利上昇による返還総額への影響シミュレーション

金利上昇が実際の返還総額にどの程度影響するのか、4年制大学で月額10万円(総額480万円)を借り、20年で返還するモデルケースで試算した。

返還総額シミュレーション(総額480万円・20年返還)

金利水準適用利率(年利)毎月の返還額利息総額(目安)
超低金利期(底値)0.004%約20,000円約2,000円
2025年初頭の水準約1.700%約23,600円約86万円
上限金利(最大値)3.000%約26,600円約159万円

かつての「ほぼ無利子」状態と比較すると、上限3.0%に達した場合、返還総額は約160万円増えることになる。現状からの比較でも、上限まで上がればさらに約70万円の負担増となる。

不幸中の幸い:「上限3.0%」という防波堤

JASSOの第二種奨学金には、法律により「年利3.0%が上限」という強力なセーフティネットが設けられている。市場金利がどれだけ暴騰しても、3.0%を超えて請求されることはない。民間の教育ローン(4〜10%)と比較すれば、依然として最も有利な借入手段の一つであることに変わりはない。

固定金利 vs 変動金利:どちらを選ぶべきか

金利上昇局面における「利率固定方式」と「利率見直し方式(変動金利)」の選択は、多くの学生・保護者が頭を悩ませる問題である。一般的には「金利上昇局面では固定が有利」とされるが、現在は固定金利がすでに高水準にあるため、一概には言い切れない複雑な状況となっている。

各方式の特徴比較

項目利率固定方式利率見直し方式
2026年1月時点の利率2.512%1.700%
利率の変動貸与終了時の利率が20年間固定おおむね5年ごとに見直し
メリット将来の金利上昇リスクを回避
家計管理がしやすい
当面の返済負担が軽い
金利低下時に恩恵
デメリットスタート時点の負担が重い
金利低下時も高いまま
5年ごとに返済額が増える可能性
将来の返済額が不確定
おすすめの人リスク回避重視
長期返済予定の人
当面の負担軽減重視
繰り上げ返済を計画している人

専門家の見解

教育ジャーナリストやファイナンシャルプランナーの多くは、現在の金利上昇局面では固定方式を推奨している。見直し方式は5年ごとに市場金利に連動して変動するため、今後さらに上昇するリスクがある。実際、2020年度貸与終了者で見直し方式を選択した人は、当初0.002〜0.004%だった利率が、第1回見直しで1.300%程度に急上昇している。

ただし、繰り上げ返済を計画している人や短期完済見込みの人は見直し方式が有利な場合もある。また、上限3%のキャップがあるため、「最悪でも3%」というリスクを許容できるなら見直し方式も選択肢となる。

重要:利率選択は卒業直前まで変更可能

申し込み時に選択した方式は、貸与終了年度(卒業年度)の一定時期まで変更可能である。大学によって締切が異なる(早いところは11月、遅いところは2月)ため、早めに学生課に確認し、卒業直前の金利状況を見て最終判断することを強く推奨する。

参照:JASSO「第二種奨学金の利率の算定方法の選択」

2026年度からの奨学金制度変更

金利上昇という厳しい環境の中、政府は教育費負担軽減に向けた支援策を着実に拡充している。2025〜2026年度にかけて導入・拡充された主な制度を解説する。

多子世帯向け授業料等無償化(2025年度〜)

3人以上の子を同時に扶養する世帯は、所得制限なしで授業料・入学金が上限まで減免される。従来の約380万円以下という制限が撤廃された画期的な変更である。

項目変更前変更後
対象世帯世帯年収約380万円以下多子世帯は所得制限なし
資産要件2,000万円未満5,000万円未満

注意点として、JASSOへの申請手続きが必須であり自動適用ではない。「うちは対象外」と思い込まず、必ず確認することを推奨する。

授業料後払い制度(HECS方式)の導入

大学院修士課程・専門職学位課程を対象に、在学中は授業料を納付せず卒業後に所得連動で返還する制度が2024年度から開始された。無利子で、年収300万円程度から返還が始まる。生活費奨学金との併用も可能である。

高等学校等就学支援金の拡充(2026年度〜)

私立高校を含む高校授業料の所得制限が撤廃される見通しである。私立高校は全世帯に年間最大45.7万円が支給される。

参照:文部科学省「奨学金事業の充実」JASSO「授業料後払い制度」

代理返還制度を導入している企業一覧

企業が従業員のJASSO奨学金をJASSOに直接送金する「代理返還制度」の導入企業数は急増しており、2025年6月時点で3,721社に達した。2023年12月の約1,463社から約2.5倍に増加している。

導入企業数の推移

時点導入企業数
2023年12月約1,463社
2024年10月2,587社
2025年6月3,721社

代理返還制度のメリット

従業員にとっては返済負担が減り、その分にかかる所得税も非課税となる。企業にとっては人材確保・定着率向上につながり、支援額は損金算入できるため法人税の節税効果もある。

2025-2026年の注目導入企業(代表例)

企業名支援内容特徴
リンクアンドモチベーション月額5万円(年間60万円)全額負担・完済まで支援
業界最高水準
豊田東海警備グループ月額2万円全正社員対象
大東建託年間最大10万円最長5年・総額50万円
ノジマ月額上限あり小売業界の先駆け
JR東日本月額上限あり大手インフラ企業

導入企業はサービス業、医療・福祉、建設業、IT、金融など幅広い業種に広がっており、特に地方中小企業や人手不足業界での導入が顕著である。就職活動時に、福利厚生としてこの制度があるかを確認することを強く推奨する。

導入企業の検索方法

JASSOの「奨学金返還支援(代理返還)」特設サイトで、業種・地域別に導入企業を検索できる。

参照:JASSO「奨学金返還支援(代理返還)」検索ページJASSO「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」

返還困難時の救済制度

金利上昇や収入減で返還が困難になった場合でも、延滞する前に手を打てば信用情報は守られる。2024年4月の制度改正で要件が大幅に緩和されており、より利用しやすくなっている。

減額返還制度(月々の返還額を減らす)

毎月の返還額を減らし、その分返還期間を延長する制度である。2024年4月の改正で選択肢が増え、年収基準も緩和された。

項目内容
減額割合2分の1、3分の1、4分の1(新設)、3分の2
年収基準(給与所得者)400万円以下(旧:325万円以下)
子2人扶養の場合500万円以下
子3人以上扶養の場合600万円以下
適用期間上限通算15年(180ヶ月)

例えば毎月2万円の返済がきつい場合、「4分の1」を選べば月5,000円に抑えることができる。ただし返済期間が延びるため、第二種奨学金の場合は総支払額が増加する可能性がある点に注意が必要である。

返還期限猶予制度(返還を一時的に待ってもらう)

災害、傷病、失業、経済的困難などの事情がある場合、返還を先送りにできる制度である。

項目内容
年収基準(経済困難事由)給与所得者:300万円以下
適用期間上限通算10年(120ヶ月)
猶予期間中の利息発生しない(無利息)

重要なのは、猶予期間中は第二種奨学金でも利息が発生しない点である。金利上昇局面において、一時的に負担を遮断する手段としても機能する。

延滞を避けることが最重要

奨学金の延滞は個人信用情報機関に登録され、将来のローンやクレジットカード審査に影響する。返済が苦しくなったら、延滞する前に必ずJASSOに相談することが重要である。

参照:JASSO「月々の返還額を少なくする(減額返還制度)」JASSO「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」

これから借りる人のための4つの防衛戦略

2026年度以降に奨学金を利用する学生・保護者に向けて、金利上昇時代を乗り越えるための具体的な戦略を提案する。

戦略1:まずは「借りずに済む制度」を徹底的に探す

2024〜2025年度の制度改正により、年収約600万円程度の中間層まで支援対象が拡大している。有利子の第二種奨学金を借りる前に、以下の対象にならないか必ず確認すること。

  • 多子世帯(扶養する子供が3人以上):所得制限なしで授業料・入学金が一定額まで無償化
  • 私立理工農系学部の学生:文系との授業料差額相当の支援あり
  • 大学院生:「授業料後払い制度」で在学中の授業料を国が立て替え、卒業後に所得連動で返還(無利子)

戦略2:「固定」か「変動」か、卒業直前まで見極める

申し込み時はとりあえずどちらかを選択しておき、「貸与終了年度(卒業年)の冬」に最新の金利状況を確認して変更手続きを行うこと。変更の締切は大学によって異なる(早いところは11月、遅いところは2月)ため、必ず学生課に確認すること。

戦略3:就活の必須条件!「代理返還制度」のある企業を狙う

代理返還制度を導入している企業は3,700社を超えている。福利厚生欄に「奨学金返還支援」があるかを就職活動時に必ずチェックすること。特にリンクアンドモチベーションのように完済まで全額支援を打ち出す企業も出てきている。

戦略4:返せなくなったら即「減額返還」を申請

万が一、利上げや収入減で返済が厳しくなっても、延滞する前に「減額返還制度」を申請すれば月々の支払いを4分の1まで減らせる。2024年4月から年収要件が大幅に緩和されており、年収400万円以下(子供がいる場合は最大600万円以下)で利用可能である。

よくある質問(FAQ)

Q1. 日銀の利上げは奨学金の返還にどのような影響を与えますか?

A. 日銀の利上げは、JASSO第二種奨学金(有利子)の利率に直接影響します。特に「利率見直し方式」を選択している場合、5年ごとの見直し時に市場金利上昇が反映され返還額が増加します。2026年1月時点で利率固定方式は2.512%、見直し方式は1.700%に上昇しています。ただし法令により上限3.0%が定められているため、それを超えることはありません。無利子の「第一種奨学金」には影響はありません。

Q2. 固定金利と変動金利(見直し方式)、金利上昇局面ではどちらを選ぶべきですか?

A. 金利上昇局面では一般的に固定金利が推奨されます。固定方式は貸与終了時の利率が20年間変わらないため、今後の上昇リスクを回避できます。ただし現在の固定金利(約2.5%)はすでに上限3%に近いため、見直し方式(約1.7%)で当面の負担を抑え、繰り上げ返済を活用する戦略も有効です。利率選択は貸与終了年度の一定時期まで変更可能なので、卒業直前の金利状況を見て最終判断することを推奨します。

Q3. 奨学金の返還が困難な場合に利用できる救済制度はありますか?

A. 主に2つの制度があります。「減額返還制度」は月々の返還額を2分の1〜4分の1に減額でき、年収400万円以下(子供がいる場合は最大600万円以下)で利用可能です。「返還期限猶予制度」は返還を最大10年間先送りでき、猶予期間中は利息が発生しません。2024年4月の改正で要件が大幅に緩和されています。延滞前にJASSOに相談することが重要です。

Q4. 奨学金の代理返還制度とは何ですか?導入企業はどこで確認できますか?

A. 代理返還制度は、企業が従業員に代わってJASSOに奨学金を直接返済する制度です。従業員は返済負担が減り、その分の所得税も非課税になります。2025年6月時点で導入企業は3,721社に達しています。JASSOの「奨学金返還支援(代理返還)」検索ページ(https://dairihenkan.jasso.go.jp/)で導入企業を検索できます。

Q5. 2026年度から奨学金を借りる場合、金利はどのくらいになりますか?

A. 2026年度貸与終了者の利率は、卒業時(2026年3月等)の市場金利に基づき決定されます。2026年1月時点で利率固定方式は2.512%、見直し方式は1.700%です。日銀の追加利上げが予測されており、2026年後半〜2027年には上限3%に到達する可能性があります。ただし上限3%を超えることはなく、民間ローン(4〜10%)と比較すれば依然として有利な条件です。

Q6. 利率の上限3%は今後引き上げられる可能性はありますか?

A. 現時点で上限3%引き上げの公式発表や議論はありません。上限は法令で定められており、変更には法改正が必要です。政府は教育費負担軽減を推進しており、引き上げは政策と逆行するため政治的ハードルは高いと考えられます。ただし「増額貸与」部分は例外規定があり、JASSOの調達金利が3.1%を超えた場合はその利率が適用される可能性があります。

参考リンク・情報源

公的機関(JASSO・文部科学省)

大学(手続き案内例)

シンクタンク・金融機関(経済予測・市場分析)

ニュースメディア・情報サイト

お金・奨学金に関する専門メディア

企業プレスリリース

まとめ:高利率時代を乗り越えるために

奨学金はもはや「低金利の借金」ではなく、「市場金利に連動する金融商品」へと変貌した。「金利が850倍になった」という衝撃的なニュースに過度に怯える必要はないが、「上限3.0%になった場合の返済額」をシミュレーションし、それに耐えられるかを基準に計画を立てることが、自分の未来を守る唯一の方法である。

一方で、政府による支援策の拡充、代理返還制度を導入する企業の急増、減額返還制度の要件緩和など、返還をサポートする仕組みは着実に整備されている。正しい知識を身につけ、利用可能な制度を最大限活用することで、金利上昇時代を乗り越えることは十分に可能である。

これから奨学金を借りる方、今年度から返済が始まる方は、この記事で紹介した4つの防衛戦略を参考に、自身の状況に合った対策を講じていただきたい。



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