【現役薬剤師からの提案】ちびっこと食物アレルギー



はじめに

 どうも、薬剤師のしきぽんです。
 今日はいろんな人が困っているであろう、子供のアレルギーについてお話ししていきます!

 小児科の門前薬局にいた頃は、食物アレルギーや喘息についての質問をよく受けていました。
 近年になって解明されてきた部分が多いとはいえ、これらに悩まされた人はたくさんいたのではないでしょうか。

 そんなわけで、今回は小児のアレルギーについて、ざっくりと解説をしていきます。
 もっと踏み込んだ内容を知りたい方は、是非ご連絡ください♪

 では、いきましょう!

小児の食物アレルギー

 今回の記事では、主に食物アレルギーについて触れていきたいと思います。
 アレルギー症状は他にも数多くありますが、今回の記事だけでは到底語り尽くすことができません。
 また随時更新をしていきますので、よろしくお願いいたします。

食物アレルギーとは?

 そもそも食物アレルギーとは何なのでしょうか?
 それについて、極力シンプルにしてみたのが下記の説明です。

「本当なら自分の体を守ってくれるはずの免疫機能が、何かの間違いで食べ物などを敵と勘違いして攻撃する。その結果、自分自身の体を傷つけてしまう」

 とってもザックリとしたものですが、おおむねこんな感じですね。

 具体的なメカニズムについては、あえてここでは語りません。
 専門用語がたくさん出てきてしまいます(笑)

何でアレルギーになっちゃうの?

 医療技術の進歩にともない、アレルギーの発症に対する考え方は年々変わってきております。

 2021年現在での主流な考え方は以下の通り。

 アトピー体質の赤ちゃんが「乳児湿疹」や「アトピー性皮膚炎」になった時、傷ついた皮膚から食べ物の成分が体の中に入り込む。体内に入り込んだ食べ物の成分から、アレルギーの原因物質が作られる。

 その結果として食物アレルギーを発症してしまう。

 気管支喘息なども、似たような仕組みによって発症するのではないかと言われています。 
 ちなみに、ここでいうアトピー体質は親から子へ遺伝するとされていますね。

 また、以下に示すのが年齢別のアレルギーの発症数になります。

※食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》より抜粋

 なんと、いちばん多いのは0歳児となっていますね。

 10歳未満で9割近い数が発症しているのが現状です。

アレルギーって自然に治るものなの?

 赤ちゃんの頃にアレルギーを発症した多くの人は、成長とともに症状が現れにくくになり、アレルギーの原因となる食べ物を口にできるようになります。

 あくまでも一般的な話ではありますが、卵や牛乳、小麦は比較的改善しやすいとのデータがあります。一方で、ゴマやピーナッツ、蕎麦などは治りにくいと言われています。

 研究結果の報告によってバラつきはあるものの、日本人はおおむね下記のようなデータに落ち着いています。

  • 卵は6歳までに66%程度が耐性を得られた。
  • 牛乳は3歳までに60%程度が耐性を得られた。
  • 小麦は3歳までに63%程度が耐性を得られた。

 もちろん、3歳あるいは6歳を超えて症状が継続していたとしても、その後に改善する可能性はあります。

 アレルギー症状の程度にもよりますので一概には言えませんが、主治医とともに治療にあたっていくようにしましょう。

どんな食べ物でアレルギーが報告されているの?

 卵や牛乳、小麦だけで、アレルギーの原因の72%を占めています。

 具体的な割合は下図の通りです。

※食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》より抜粋

 結構いっぱいあります。
 これらのアレルギーがあるために使えないお薬もありますので、薬局では必ずアレルギー歴を伝えるようにしてください。アナフィラキシーショック等の重篤な事故につながりかねません。

アレルギーのある人が使ってはいけないお薬って何?

 たくさんあります。
「卵のアレルギーに対して使ってはいけない薬」や、「牛乳のアレルギーに対して使ってはいけない薬」と言うように、その患者さんがどんなアレルギーを持っているかで、使える薬と使えない薬が変わってきます。

 もっと言えば、同じ牛乳アレルギーでも、牛乳の中のどの成分に対してアレルギーを持っているのかで、使えない薬が全然違ってきます。

「ここまで来ると、そんなんわかるわけないじゃないか!」

 という声が聞こえてきそうですね(-_-;)


 実際、我々薬剤師も薬局で患者さんのアレルギー歴を聞いた時、その人が具体的にどんな成分に対してアレルギーを持っているのか把握できていないことがあります。
 なぜならば、来局した患者さんがいつアレルギーの検査を受けたかも分からない上に、常にその検査結果を持っているとは限らないからです。

 なので、牛乳アレルギーと言われれば、それに類する成分は禁忌薬として出さないように目を光らせます。もし仮に処方箋上に禁忌薬を発見した場合は、患者さんを待たせることになってしまいますが、疑義照会のためお時間を頂戴しています。

 と、前置きが長くなってしまいましたが、以下によく出る禁忌薬の組み合わせを記載しておきますね。

 ※比較的使用頻度の高いものとして、牛乳アレルギーに対する禁忌薬を記載しています。

 牛乳アレルギーに対して。

成分商品名
タンニン酸アルブミンタンナルビンなど
乳酸菌製剤エンテノロン®、ラックビー®など
カゼインアミノレバン®、エネーボ®、エンシュア®、ラコール®など
乳糖フルタイド®ディスカス、アドエア®ディスカス、シムビコート®タービュヘイラー、レルベア®エリプタなど

 あくまでも一例です。繰り返しになりますが、薬局利用時には必ずアレルギー歴、副作用歴を薬剤師に伝えるようにしてください。

どんな対策をすればいいの?

 保湿剤によるスキンケアはしておきましょう。
(アレルギーのない小児も、積極的に保湿をして皮膚のバリア機能を保ちましょう)

 アトピー性皮膚炎がある場合、そちらのケアが大切になってきます。しっかりと保湿剤を塗り込みましょう。市販の保湿剤でも良いです。
(※ヘパリン類似物質含有の薬剤が使われることが多いですが、使用の前には必ず医師もしくは薬剤師に相談してください)

 スキンケアを行いつつ、必要最小限の範囲でアレルギーの原因となっている食べ物を除去していきます。

 アレルギーを引き起こす食べ物の量は患者さんひとりひとりで異なります。

 医師の言う「「食べられる範囲」とは、患者さんにとって症状を誘発されずに食べられる量を指します。

 「食べられる範囲」内では積極的に食べることに問題はなく、「念のため」、「心配だから」と過度にアレルギーの原因食物を除去する必要はありません。

 なお、「食べられる範囲」については、経口負荷試験と呼ばれる検査によって、少しずつ把握していくことになります。

 アレルギーに対して受診をした場合、年齢やその程度に応じて、エピペン・抗アレルギー薬といった薬剤が処方されていることもあるでしょう。
 その中でも、特にエピペンは定期的に使い方を確認しておかなければ、いざ使用する時になってミスすることも少なくありません。

 アナフィラキシーショックの症状が出た時に、パニックになって使い方を誤ったことで、小児と親御さんが大けがを負った事例も確認されています。苦しむ子供が発揮する力は尋常ではありません。大人がしっかりと身体を固定した上で、エピペンの針の向きを確認して使用しましょう。

おわりに

 今回、ここで取り扱ったものは、とても「限定的」なお話です。
 アレルギーの分野において、食物アレルギーだけでも膨大な数の論文が存在しています。

 治療や予防に対する具体的なアクションプランについては、他にもいくつかありますので、都度医師・薬剤師と相談をしていきましょう。

 これからも患者さんの生活の質を上げられる記事を書いていきます。

 多くの子供たちが健やかに幸せな暮らしができるよう、微力ながらお力添えできたらと思いますので、今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。

 参考:食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》



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